(事件名なし)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 脳性麻痺による身体障害(身体障害者福祉法別表第1級)を有し、市立特別支援学校の中学部に通学していた生徒が、平成24年9月26日、担任教諭による給食介助中に誤嚥により窒息状態に陥って心肺停止となり、低酸素性脳症に由来する重篤な脳障害を後遺した事故について、生徒及びその母・兄(1審原告ら)が、学校設置者である市に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を、独立行政法人日本スポーツ振興センターに対し、災害共済給付契約に基づく障害見舞金の支給を求めた事案の控訴審である。原審は、市に対する請求について、救護義務違反及び説明義務違反を認定したものの後遺障害との因果関係を否定し、「相当程度の可能性」の侵害として慰謝料500万円のみを認容した。1審原告ら及び市の双方が控訴した。 生徒は、嚥下障害を有しており、学校配置の言語聴覚士や指導医から給食前の吸引等の必要性が指摘されていたが、学校側は、母が吸引に消極的であったことやスクールバス利用への影響を慮り、医療的ケアの必要性に関する情報を母に提供しないまま、教諭のみによる給食介助を継続していた。 【争点】 主な争点は、(1)給食介助における安全配慮義務違反の有無、(2)誤嚥窒息時の救護義務違反の有無、(3)医療的ケアの必要性等に関する説明義務違反の有無及び後遺障害との因果関係、(4)過失相殺の可否、(5)障害見舞金に関する本件省令21条5項の憲法14条適合性及び「同一部位」該当性である。 【判旨】 控訴審は、原審判断を変更し、市の説明義務違反と後遺障害との間の相当因果関係を肯定した。まず、安全配慮義務違反(医療的ケアと同等の措置を講じる義務)については、医療的ケアの非対象者に対し学校独自の判断で看護師に医行為を行わせることはできないとして否定した。救護義務違反についても、担任教諭はマニュアルどおりに背部叩打法を実施し速やかに緊急放送を依頼したと認定し、否定した。 他方、説明義務違反については、特別支援学校は保護者に対し医療的ケアの必要性に関する情報を提供する義務を負うとした上で、学校が指導医や言語聴覚士の意見を母に伝えず、吸入も医療的ケアの申請対象であることの説明も怠った点に義務違反を認めた。因果関係については、給食前に吸入等の医療的ケアが実施されていれば貯留していた痰等が除去され窒息に至らなかった高度の蓋然性があること、及び、吸入に関する説明がされていれば母は医療的ケアを申請していた蓋然性が高いことから、説明義務違反と後遺障害との相当因果関係を肯定した。 損害額は、生徒につき入院雑費・付添費・慰謝料・将来介護費等合計約5144万円を認定したが、母にも情報収集の過失があるとして3割の過失相殺を行い、生徒に3601万円余、母に175万円、兄に84万円の賠償を命じた。 センターに対する障害見舞金請求については、本件省令別表及び21条5項は憲法14条に違反せず委任の範囲も逸脱しないとし、既存障害と後遺障害はいずれも「精神・神経系統」の同一部位の障害であって双方とも第1級に該当するため差額が生じないとして、請求を棄却した。