現住建造物等放火(変更後の訴因現住建造物等放火,重過失致死),占有離脱物横領,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、ホームレス生活を送っていた者であり、平成30年4月に共犯者とともに会社敷地内でプラスチック製警報装置約420個を不法に焼却した(廃棄物処理法違反)。同年11月及び12月には、放置された自転車2台をそれぞれ乗り去る占有離脱物横領に及んだ。さらに同年12月5日深夜、大阪府泉南郡内の住宅密集地において、80歳と74歳の夫婦が居住する木造瓦葺平家建住宅に隣接するガレージ内で、段ボールや新聞紙等の可燃物にライターで点火し、さらに燃えそうな物をくべて炎を大きくした。火は住宅の壁に燃え移り、西側和室等約24.9平方メートルを焼損するとともに、住居内にいた夫婦2名を一酸化炭素中毒及び酸素欠乏により死亡させた。被告人は、ホームレス生活で募らせた鬱憤を晴らすために放火に及んだものであった。 【争点】 第一の争点は、現住建造物等放火の故意の有無、すなわち被告人が放火した時点で火が住宅に燃え移るかもしれないという認識があったかどうかである。弁護人は、被告人が認知症やIQ70の影響により火の意味内容を正しく理解しておらず、住宅への延焼の認識がなかったと主張した。第二の争点は、被告人の責任能力の有無・程度であり、弁護人は被告人が知的障害に陥っていたとして、心神耗弱ないし心神喪失を主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、第一の争点について、被告人の捜査段階の供述が出火場所と極めてよく整合し、具体的で不自然な点がなく信用できると判断した。一方、公判供述は出火場所と整合せず不自然であるとして信用性を否定した。その上で、被告人は住宅に近いガレージ南西部で可燃物に火を点け、さらに可燃物をくべてかなりの大きさの炎を作り出したのであり、火が住宅に燃え移るかもしれないという認識があったと認定した。弁護人がIQ70や認知症の影響を援用した点については、知能検査の一項目の結果に過ぎず直ちに本件での火に対する理解に当てはまるものではなく、被告人が別件でドラム缶による焼却行為をするなど火の性質を理解した行動を取っていたことも指摘して排斥した。第二の争点については、精神鑑定人の「軽度の血管性認知症にり患していたが、犯行への影響はない」との意見を採用し、被告人の動機や犯行態様、犯行後の行動に精神障害の影響をうかがわせる事情はないとして、完全責任能力を認めた。量刑については、何ら落ち度のない居住者2名が死亡した重大な結果、深夜の住宅密集地での危険な犯行態様、鬱憤晴らしという酌量の余地のない動機を重視し、廃棄物不法焼却や占有離脱物横領にも短期間で及んでいることを併せ、被告人に内省の深まりが不十分であることも踏まえ、求刑どおり懲役16年を言い渡した。