特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、「立坑構築機」に係る特許権(特許第3694724号)の特許権者である。立坑構築機とは、鋼管等を回転させて地中に圧入し、立坑(縦穴)を構築するための建設機械である。本件特許発明の特徴は、大型の立坑構築機を輸送する際に幅を狭くできるよう、ベースフレームを複数に分割するとともに、把持機構に「それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片」を備えた点にある。 原告は、被告スミテックエンジニアリングが製造し被告大善建設に販売した立坑構築機2台(型名LMV-4000DZR及びLMV-5000DZR)が本件特許発明の技術的範囲に属するとして、特許法に基づく差止め・廃棄請求のほか、共同不法行為による損害賠償として主位的に約1億2375万円(予備的に約4931万円)等の支払いを求めた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件特許発明の構成要件E(「把持機構は、それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えている」)を充足するか、特に円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)がある被告製品の構成が「両端部を各々接続して」との文言に該当するか、(2)本件特許に進歩性欠如の無効理由があるか(乙2発明に乙20発明等を適用した容易想到性)であった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず構成要件Eの充足性について、本件明細書の課題解決手段の記載(段落【0011】)で「円弧状ベアリングは隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成し、内輪及び外輪の間に配置された転動体がこぼれ落ちない構造になっている」とされていることから、本件発明は円弧状ベアリング片を「隙間なく接続」することに技術的意義があると認定した。被告製品では、円弧状部材間に客観的に0.1mm〜2.1mm程度の隙間が存在しており、環状ベアリングは内外輪部ケースや回転リング部材の端部を接続して構成されるものであって、円弧状ベアリング片自体の端部を隙間なく接続するものではないとして、構成要件Eを充足しないと判断した。原告の「製作誤差の範囲にすぎない」との主張も退けられた。さらに裁判所は、念のため無効の抗弁についても判断し、乙2発明(回転式ケーシングドライバの昇降フレーム)と乙20発明(大形転がり軸受の軸受セグメント)は技術分野の関連性、課題の共通性、作用・機能の共通性が認められ、両者を組み合わせることで本件発明は当業者が容易に想到し得たとして、進歩性欠如による無効理由も認めた。