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【事案の概要】 平成27年7月26日、被告SIPの代表取締役である機長が操縦する小型飛行機(パイパー式PA-46-350P型)が、東京都調布飛行場を離陸した直後に失速し、原告の自宅上に墜落した事故(調布飛行場飛行機墜落事故)に関する損害賠償請求事件である。この事故により原告の自宅は全焼し、当時2階にいた原告の娘(34歳)が死亡したほか、原告自身も負傷してPTSD・鬱病等を発症した。さらに、自宅内の家財、自動車、飼育していた犬10匹と亀1匹も失われた。 原告は、①機長が最大離陸重量を守らず適切な操縦をしなかったとして被告SIPに会社法350条に基づく責任を、②被告日本エアロテックに使用者責任(民法715条)又は運航管理義務違反の不法行為責任(民法709条)を、③被告東京都に調布飛行場の使用を認めた国家賠償責任をそれぞれ主張し、連帯して約9517万円の損害賠償を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)機長の過失による被告SIPの損害賠償責任の有無、(2)被告日本エアロテックの損害賠償責任の有無、(3)被告東京都の国家賠償責任の有無、(4)損害額である。被告SIP側は、飛行機の離陸重量は最大離陸重量を超過しておらず、エンジン出力低下等の他の原因も考えられると主張した。被告日本エアロテックは、機長との間に雇用契約や指揮監督関係はなく、会員との契約は飛行機のレンタルにすぎないと反論した。被告東京都は、飛行場の使用は届出制であり許可制ではないこと、本件飛行が遊覧飛行であると認識していなかったことを主張した。 【判旨】 裁判所は、運輸安全委員会の事故調査報告書に基づき、本件飛行機が最大離陸重量1950kgを約49〜58kg超過した状態で飛行したこと、低速で離陸したこと及び過度な機首上げ姿勢を継続したことが事故原因であると認定し、機長の過失を認め、被告SIPの会社法350条に基づく責任を肯定した。 被告日本エアロテックについては、会員に対する飛行機の運航実態から実質的に航空運送事業を営んでいたと認定し、航空法上の運航管理担当者を設置する義務があったのにこれを怠り、離陸重量超過の情報を機長に提供しなかった点に不法行為(民法709条)の成立を認めた。 他方、被告東京都については、調布飛行場の使用は運用時間内であれば届出で足りる制度であり、本件協定・覚書の内容から直ちに個々の住民に対する職務上の法的義務は導かれないとして、国家賠償責任を否定した。 損害額については、娘の死亡慰謝料3000万円・逸失利益約4175万円の法定相続分のほか、建物焼失、家財損害350万円、PTSD等による後遺障害慰謝料690万円(9級相当)、建物撤去費用約724万円等を認定し、弁護士費用を含め合計約7549万円の支払を被告SIP及び被告日本エアロテックに連帯して命じた。