不正競争防止法違反
判決データ
- 事件番号
- 令和1う1805
- 事件名
- 不正競争防止法違反
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年7月21日
- 裁判種別・結果
- 破棄自判
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 火力発電システム等の研究・開発を目的とするA株式会社は、タイ王国における火力発電所建設工事に際し、建設資材を陸揚げするため仮桟橋にはしけを接岸させる必要があった。しかし、同仮桟橋は総トン数500トン以下の船舶用として建設許可されたものであったところ、総トン数500トンを超えるはしけ3隻を接岸させようとしたため、タイ運輸省港湾局の支局長Bから許可条件違反を指摘され、貨物の陸揚げができない事態に陥った。同社の執行役員Y及びロジスティクス部長Zらは、Bから賄賂を要求されたことを受け、現金1100万タイバーツ(当時の円換算約3993万円)を供与することを検討し、同社の取締役常務執行役員兼エンジニアリング本部長であった被告人に相談を持ちかけた。被告人は2月10日及び13日の2回の会議に出席し、Yらから本件供与の可否を諮問されたが、代替手段の検討を促すにとどまり、明確に制止しなかった。その後、Yらの主導により下請業者の従業員Cを介してBに現金が供与され、はしけの接岸が実現した。被告人はYらとの共謀による不正競争防止法違反(外国公務員等に対する贈賄)として起訴された。 【争点】 被告人に外国公務員贈賄の共謀共同正犯が成立するか、すなわち、被告人が2回の会議において本件供与を了承し、Yらと共謀を遂げたと認められるかが最大の争点であった。弁護側は、被告人は本件供与を了承しておらず共謀は成立しないと主張し、理由不備、理由齟齬、訴訟手続の法令違反、事実誤認を控訴趣意として主張した。 【判旨(量刑)】 東京高裁は、原判決が共謀共同正犯を認定した判断には事実誤認があるとして、原判決を破棄した。その理由として、第一に、被告人が13日の会議で「仕方がないな」と述べて本件供与を了承したとするYの証言について、Yは共犯者中最上位の立場にあり被告人に責任を転嫁する動機があること、Yの証言と同席したZの証言が了承の時期という核心部分で食い違っていること、10日の会議後にYの指示に反してZが独断で現地に供与を指示した可能性を認めた原判決の推認が経験則に反すること等を指摘した。第二に、被告人が終始代替手段の検討を促し、本件供与後も「現地は私の理解の域を超えます」と返信するなど消極的姿勢を示していたことを重視した。第三に、原判決が認定した「代替手段発見を解除条件とする留保付き共謀」は、実行行為の意思の合致があるとはいえず論理則に反すると判断した。 もっとも高裁は、被告人がプロジェクト全体を管理する立場にあり、違法行為の画策を知りながらこれを明確に制止せず、「仕方がないな」と述べて事実上黙認する態度を示したことは、Yらの犯行を精神的に容易にした幇助に当たると認定した。破棄自判の上、不正競争防止法違反の幇助犯として被告人を罰金250万円に処した。共犯者らによる組織的犯行で外国公務員に多額の賄賂を供与し国際商取引の公正を害した点は厳しく非難されるべきとしつつ、被告人の関与は不作為による幇助にとどまること、退職等の社会的制裁を受けていること、前科前歴がないこと等を考慮し、罰金刑が相当と判断された。