AI概要
【事案の概要】 東京都が築地市場の移転先として豊洲地区の土地(本件各土地)を約578億円で取得したことについて、東京都の住民である原告らが、当時の東京都知事であった被告補助参加人(石原慎太郎氏)に対する損害賠償請求を東京都に求めた住民訴訟である。本件各土地は、民間企業(東京ガス等)の工場跡地であり、環境基準の4万3000倍のベンゼン等が検出されるなど深刻な土壌汚染が存在していた。東京都は平成14年に民間地権者との間で豊洲地区開発整備に係る合意を締結し、地権者側が土壌汚染対策を実施した上で「適正な時価」で売買する枠組みを定めていた。地権者らは約100億円を投じて条例に基づく土壌汚染対策を完了したが、その後の専門家会議の調査で新たな高濃度汚染が判明し、東京都は586億円の追加対策費用を見積もった。東京都は地権者らとの交渉の結果、78億円の追加負担を得る協定を締結した上で、土壌汚染を考慮しない価格で本件各土地を取得した。原告らは、土壌汚染対策費用を考慮しない売買価格の決定は地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反し違法であると主張した。 【争点】 (1) 参加人が本件各契約の締結をしたか否か、(2) 本件各契約の締結が違法か否か(取得価格と正常価格との乖離の程度、土地取得の必要性、交渉経過の合理性)、(3) 参加人の過失の有無、(4) 参加人の指揮監督義務違反の有無、(5) 東京都の損害額。 【判旨】 請求棄却。裁判所はまず、本件各契約の締結権限は東京都事案決定規程に基づき財務局長に委任されており、参加人自身が契約を締結したとは認められないとした。次に、本件各土地の正常価格について、原告らの主張する3通りの算定方法を検討し、土壌汚染対策費用全額を控除する方法や事後に判明した費用を基礎とする方法は不合理であるとして退けつつ、面積按分による約156億円を控除した正常価格(約421億円)に一応の合理性を認めた。その上で、取得価格と正常価格の較差は約1.37倍にとどまり、地権者らの78億円の追加負担を考慮すれば約1.32倍に縮小すると認定した。さらに、築地市場の老朽化・狭隘化への対処として豊洲移転が不合理とはいえないこと、代替候補地がなかったこと、専門家会議の提言に基づく対策により安全性が確保されること、既取得用地の活用の必要性、地権者らとの粘り強い交渉経過等を総合考慮し、財務局長の裁量権の逸脱又は濫用には当たらず違法ではないと結論付けた。