損害賠償請求行為請求事件(住民訴訟)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 α市の住民であり同市職員でもある原告が、地方自治法242条の2第1項4号に基づき住民訴訟を提起した事案である。α市内で保育園を運営する社会福祉法人に対し、平成26年12月から平成27年3月までの間、零歳児加算額として合計456万3200円の補助金が交付された。しかし、同保育園は平成26年12月に1名の零歳児を入所させたことにより、α市の要綱が定める面積基準(乳児室及びほふく室を通じて零歳児1人につき5平方メートル以上の有効面積)を満たさない状態となっていた。その後、α市長は平成28年6月に要綱を改正し、面積基準に「おおむね」との文言を加えた上、平成20年4月に遡及適用するものとした結果、上記補助金交付は面積基準に反しないこととなった。入所の経緯には特殊な事情があり、対象児童の母親が末期癌で余命僅かと宣告され、父親が看病と2児の養育を単独で行っていたため、緊急に保育所への入所が必要とされたものであった。原告は、補助金交付決定の違法を理由とする不当利得返還請求権・損害賠償請求権の行使、及び違法な要綱改正による損害賠償請求権の行使を、α市の執行機関である被告に求めた。 【争点】 (1) 適法な監査請求の前置の有無(監査請求期間の経過と「正当な理由」の有無)、(2) 社会福祉法人に対する不当利得返還請求権の成否、(3) 市長及び職員の違法な交付決定による不法行為に基づく損害賠償請求権の成否、(4) 市長の違法な要綱改正による不法行為に基づく損害賠償請求権の成否(特に要綱改正によるα市の損害発生の有無)。 【判旨】 裁判所は、不当利得返還請求権及び違法な交付決定に基づく損害賠償請求権に係る訴えについては、いわゆる不真正怠る事実として監査請求期間の制限に服するところ、原告は遅くとも平成28年2月頃には監査請求をするに足りる程度に交付決定の存在等を知ることができたにもかかわらず、平成29年9月まで監査請求をしなかったものであり、「正当な理由」も認められないとして、適法な監査請求の前置を欠く不適法な訴えであるとして却下した。他方、違法な要綱改正に基づく損害賠償請求権に係る訴えは、要綱改正自体が財務会計上の行為に当たらず監査請求期間の制限に服しないとして適法とした上で、本案について判断した。裁判所は、補助金の返還を求めることができるのは申請者に帰責性がある場合に限られるところ、面積基準違反は市側の審査の不備に起因するものであり、社会福祉法人には帰責性がないから補助金返還義務は発生しておらず、要綱改正により同法人が返還義務を免れたとはいえないとして、α市に損害は生じていないと判断し、原告の請求を棄却した。