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【事案の概要】 被告(テンパール工業)は、「回路遮断器の取付構造」に関する特許(第5688625号)の特許権者である。本件特許は、プラグインタイプの回路遮断器を分電盤の取付板に取り付けるための構造に関するもので、回路遮断器の底面から突出するか否かを外部つまみで択一的に選択保持可能なロックレバーを設け、取付板上でスライドさせることで母線と接続し、嵌合部と被嵌合部の嵌合により鉛直方向の動きを規制するとともに、ロックレバーの嵌合により取り外し方向の動きを規制する構成を特徴とする。なお、本件特許は、平成12年の第1世代の親出願から5世代にわたる分割出願を経て、平成26年に出願されたものである。原告(河村電器産業)は、本件特許について特許無効審判を請求したが、特許庁は「請求は成り立たない」との審決をした。原告は、同審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 ①甲1(特開平10-248122号)を主引用例とする進歩性欠如の有無(取消事由1)、②甲3(特開平11-69529号)を主引用例とする進歩性欠如の有無(取消事由2)、③分割要件違反を前提とする甲4(特開2002-150911号)を主引用例とする新規性・進歩性欠如の有無(取消事由3)。いずれの取消事由においても、甲2(実公平6-44246号)に記載された係止アームの選択保持構造を主引用発明に適用できるか否かが中心的な争点となった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1について、裁判所は、甲1発明の「分岐開閉器を取り付けた取り付け部材」が本件発明の「回路遮断器」に相当するとの原告の主張を認め、審決の相違点3の容易想到性判断⑴には誤りがあると判断した。しかし、甲1発明の板ばねに甲2発明の係止アーム構造(ロックを外した状態を保持できる構造)を適用する動機付けについては、甲1発明では板ばねが自動的に突出して係止する構成であり、選択保持可能とする必要がないこと、また仮に動機付けがあるとしても小さな部材にさらに操作用取手や突起等を設ける具体的構成を容易に想到できたとはいえないことから、審決の容易想到性判断⑵に誤りはないとした。取消事由2についても、甲3発明に甲2記載の技術的事項を適用すべき問題点の記載や示唆がないとして、動機付けを否定した。取消事由3については、本件発明の「嵌合部」「被嵌合部」の構成は原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であり、分割要件に適合すると判断した。