AI概要
【事案の概要】 被告(テンパール工業株式会社)は、「回路遮断器の取付構造」に関する特許(特許第4249427号)の特許権者である。この特許は、分電盤などの取付用板にプラグインタイプの回路遮断器を取り付ける際、レバー(ロックレバー)が突出したままスライドさせても、傾斜面の作用によりレバーが自動的に引っ込んで折損を防止するという取付構造に関するものである。原告(河村電器産業株式会社)は、本件特許について特許無効審判を請求したが、特許庁は訂正を認めた上で「審判の請求は成り立たない」とする審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 なお、被告は審判手続において請求項2を訂正し、請求項1を削除する訂正請求を行い、特許庁はこの訂正を認めた上で審理を行っている。 【争点】 本件の主たる争点は、訂正後の請求項2に係る発明(本件訂正発明)が、甲1(特開平10-248122号公報)に記載された発明(甲1発明)及び甲2(実公平6-44246号公報)に記載された発明(甲2発明)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたか否か(進歩性の有無)である。具体的には、本件審決が認定した相違点2ないし4の認定・判断の当否が争われ、特に重要な争点は、(1)甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」が本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するか(相違点2)、(2)甲1発明の板ばね25に甲2発明の係止アーム12の構成(突出する状態と突出しない状態を択一的に選択保持可能とする構成)を適用する動機付けがあるか(相違点4)であった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 まず相違点2に関し、裁判所は、本件訂正発明の「回路遮断器」は取付用板に取り付けられる取付機構を有するものと理解でき、特許請求の範囲には取付機構が回路遮断機能を有する機器と一体不可分に作製されたものに限定する記載はないとして、甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は本件訂正発明の「回路遮断器」に相当すると認定し、この点に関する本件審決の認定は誤りであると判断した。 しかし、相違点4の容易想到性について、裁判所は、甲1には板ばねの係止が解除された状態で保持されることについての記載や示唆がなく、甲1発明では板ばねが自動的に突出して係止孔に係止する構成であるから、突出する状態と突出しない状態を択一的に選択保持可能とする甲2発明の構成を適用する動機付けは認められないと判断した。さらに、仮に動機付けがあるとしても、小さな板ばねや分岐開閉器に操作用取手や突起等を設けてその精度を保つ構造とすることを想起することは容易とはいえないとした。 以上から、審決の相違点4の容易想到性の判断の一部に誤りはあるものの、結論として本件訂正発明の進歩性を否定することはできないとして、審決を取り消すべき違法は認められないと結論づけた。