謝罪広告等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1ネ5306
- 事件名
- 謝罪広告等請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年7月22日
- 裁判種別・結果
- その他
- 裁判官
- 深見敏正、内田博久、澤田久文
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 認定特定非営利活動法人(第一審原告B)の理事長(第一審原告A)が、週刊誌発行会社(第一審被告)に対し、週刊誌に掲載された記事等によって名誉を毀損されたと主張して、民法709条に基づく損害賠償(第一審原告Bにつき5500万円、第一審原告Aにつき2200万円)及び民法723条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案の控訴審である。問題となった記事は、元省庁次官が顧問を務める同NPO法人の理事長が、自身のダミー会社を経由させる方法により、約15年にわたって理事長報酬以外に約7000万円を自らの口座に送金させて横領した疑惑があるとする内容であった。第一審原告Bは多額の寄付金や補助金により運営される認定NPO法人であり、特定非営利活動促進法上、役員との取引は事業報告書等に記載する義務があったにもかかわらず、これを記載していなかった。原審は、第一審原告Aに対する名誉毀損のみ成立を認め、110万円の損害賠償を認容したが、第一審原告Bに対する名誉毀損は成立しないとして請求を棄却した。これに対し、双方が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件記事等が第一審原告らの名誉を毀損するか、(2)記事の内容が事実の摘示か意見ないし論評の表明か、(3)摘示された事実の重要な部分における真実性又は真実と信じたことの相当性の有無、(4)損害額及び謝罪広告の必要性であった。特に、「"横領"疑惑」という表現が事実摘示に当たるとした上で、その真実性が認められるかが中心的な争点となった。 【判旨】 控訴審は、第一審被告の控訴を認容し、第一審原告らの控訴をいずれも棄却した。まず、本件記事等は第一審原告Aのみならず第一審原告Bに対する関係でも社会的評価を低下させる名誉毀損に当たると認定した(この点は原審の判断を変更)。しかし、記事内容の公共性及び公益目的を認めた上で、摘示事実の真実性を個別に検討し、(1)業務委託料として月額約50万円を支払っていた点、(2)Dが第一審原告Aのダミーである点、(3)支払総額が推計で約7000万円に上る点(実際は約6240万円であるが「推計で約」との表現から重大な誤りとはいえない)、(4)促進法上の記載義務に違反していた点、(5)金銭の流れが不透明で「"横領"疑惑」があるとの点について、いずれも重要な部分において真実性が認められると判断した。特に、「横領」の語義について辞書等の記載を踏まえ、一般読者の普通の注意と読み方に従えば、寄付金等を原資とする金員を拠出者の認識を免れて取得した可能性を指摘する意味での表現として理解でき、真実性が認められるとした。以上により、名誉毀損の違法性が阻却されるとして、第一審原告らの請求をいずれも棄却した。