AI概要
【事案の概要】 本件は、「ガス器具」に関する特許(特許第2908792号)についての特許無効審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。被告(株式会社旭テクノス)は、標準型ガス容器と小型ガス容器の双方を使用可能なガス器具について平成10年に特許出願し、設定登録を受けた。本件発明の特徴は、標準型ガス容器をセットした際にその端部を外に出すための開口を、小型ガス容器使用時には空気導入口として活用し、器具本体内に空気を導入して排出する空冷機構を備えることで、小型化に伴う発熱の問題を解決した点にある。原告(株式会社ニチネン)は、本件特許の請求項1、6、7について無効審判を請求したが、特許庁は訂正を認めた上で請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めて提訴した。 【争点】 本件の争点は、拡大先願(特許法29条の2)違反の有無である。具体的には、本件出願日前に出願され本件出願日後に公開された先願(甲1・特開平11-311417号、ガスコンロ装置に関する発明)に本件発明と同一の発明が記載されているか否かが問題となった。原告は主に2つの主張を行った。第一に、甲1発明の背面カバー部材で閉塞した状態でも隙間が存在し、そこから空気が導入されるため本件発明の「空冷機構」と同一であるという主張、第二に、甲1発明は背面カバー部材を開放した使用形態が可能な機械的構成を備えており、そのような使用形態は周知・慣用技術であるから同一又は実質的に同一であるという主張である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所はまず、本件発明の技術思想について、標準型ガス容器の端部を外に出す開口を小型ガス容器使用時に空気導入口として活用し、器具本体内に十分な空気の流れを生じさせて冷却性能の向上を図ることにあると認定した。その上で、原告の主張1について、甲1の図面に隙間らしきものが記載されているとしても、発明の詳細な説明には隙間を設けることを明示又は示唆する記載が全く存在しないこと、仮に隙間の存在が認められるとしても、甲1には隙間から空気を導入して冷却性能の向上を図るという技術思想は全く記載も示唆もなく、図面上の隙間はごく小さいものであるから、当業者がそこから十分な空気の流れを生じさせて冷却性能を向上できると認識するとはいえないとして排斥した。原告の主張2についても、甲1発明では小型ガスボンベ使用中に背面部を閉塞するために敢えて背面カバー部材を設けており、小型ガスボンベ使用中に背面カバー部材を開放することは全く想定されていないとし、機械的構成として可能であることをもって同一とはいえないと判断した。