AI概要
【事案の概要】 半導体の製造・販売等を目的とする原告(株式会社ワコー)は、精密電子部品等の設計・製造・販売等を目的とする被告(第一精工株式会社)との間で、平成27年4月1日、原告が有する特許権等(圧電型加速度センサ、触覚センサ、トルクセンサ、マイクロ発電機、MEMSミラーに関するもの)について専用実施権等を許諾する契約(本件契約)を締結した。本件契約では、被告が専用実施権又は独占的通常実施権を有する特許権等の出願・登録・維持に要する実費(特許実費)を被告が負担すること、及び本件製品の正味販売価格の3%をランニング・ロイヤルティとして支払うことが定められていた。原告は、平成29年度第2半期(平成29年10月1日〜平成30年3月31日)の特許実費4512万6043円の支払を請求したが、被告は専用実施権の設定登録を受けた特許1件分の6万5200円のみを支払い、残額の支払を拒絶した。原告は被告の不払いを理由に本件契約を解除し、特許実費残額4506万0843円及び平成30年4月1日から同年6月29日までのランニング・ロイヤルティ220万7070円の支払を求めて提訴した。 【争点】 1. 被告が支払義務を負う特許実費の範囲:本件契約書5条1項の「専用実施権又は独占的通常実施権を有している本件特許権等」について、専用実施権の設定登録を受けた特許権のみが対象か、それとも設定登録の有無を問わず許諾の合意がある全ての特許権等が対象かが争われた。また、被告が専用実施権を非独占的通常実施権に変更する旨の通知(本件変更通知)をした後の特許実費についても負担義務があるかが問題となった。 2. 被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲:本件契約書4条1項2号に基づき、特許権の技術的範囲に属する製品の販売のみが対象か、本件製品の販売全般が対象かが争われた。 【判旨】 裁判所は、争点1について原告の主張をほぼ全面的に認容した。本件契約書の規定は、特許実費の支払対象を専用実施権の設定登録を受けた特許権のみに限定しておらず、出願中の特許や将来の特許権も含めて許諾の対象としていること、被告も契約締結後2年半にわたり設定登録の有無を問わず特許実費全額を支払っていたことから、「専用実施権を有している」との文言は、法律上の設定登録の有無を問わず、当事者間で専用実施権等を設定する旨の合意があることを意味すると判断した。本件変更通知後の特許実費についても、変更の効力発生は平成30年3月31日であり、出願中の特許は変更通知の対象に含まれないことから、被告の負担義務を認めた。被告が過去の支払を「仮払」と主張した点も、契約上に仮払や精算の定めがなく、支払時に仮払である旨を示した証拠もないとして退けた。争点2については、ランニング・ロイヤルティの対象は特許権等が有効に存続する国における本件製品の販売であるとしたが、被告が既に平成30年4月〜9月分のランニング・ロイヤルティ448万7710円を供託しており、原告請求額220万7070円はこの範囲内であるため、弁済により消滅したと判断した。結論として、特許実費4506万0843円及び遅延損害金の請求を認容し、ランニング・ロイヤルティの請求は棄却した。