特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「回転歯ブラシの製造方法及び製造装置」に関する特許権(特許第3981290号)を有する控訴人X及び同特許権の専用実施権者である控訴人会社が、被控訴人(歯ブラシメーカー)の取引先に対し、被控訴人の製造・販売する歯ブラシの製造方法及び製造装置が控訴人特許権を侵害する旨の書面を送付したことに端を発する紛争である。被控訴人は、自社製品の製造方法等が控訴人特許の各発明の技術的範囲に属さないと主張し、控訴人らに対して、特許権に基づく差止請求権等の不存在確認、不正競争防止法に基づく虚偽事実の告知・流布の差止め、及び告知行為による損害賠償を求めた。原審(大阪地裁)は、被控訴人の製造方法等が本件各発明の技術的範囲に属しないと認定し、不存在確認と差止めの請求を全部認容、損害賠償の一部を認容したため、控訴人らが控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)被控訴人の製造方法・製造装置が本件各発明の技術的範囲に属するか(文言侵害及び均等侵害の成否)、(2)控訴人らによる取引先への告知が不正競争防止法上の虚偽事実の告知に該当するか、(3)控訴人らの故意・過失の有無、(4)損害額である。特に、特許発明の構成要件である「素線群の突出端の中央にエアを吹き込む」という要件について、エアの吹込み方向が順方向に限定されるか否かが中心的な技術的争点となった。控訴人らは、被控訴人が証拠動画のフレームを削除・改ざんしたとも主張し、被控訴人の請求は権利濫用であるとも主張した。 【判旨】 知財高裁は原判決を支持し、控訴を棄却した。まず、技術的範囲の属否について、被控訴人の製造装置の溶着ホーンにはエアを噴出する吹出し孔が存在しないと認定し、被控訴人の製造方法等は本件各発明の技術的範囲に属しないと判断した。控訴人らが主張した動画のフレーム削除についても、溶着ホーンの上昇速度が一定であると認めるに足る証拠がなく、動画が改ざんされたとは認められないとした。均等侵害の主張についても、エアの吹込み方向は発明の本質的部分に関わるとして退けた。不正競争該当性については、控訴人らの告知は被控訴人の現行製造方法に対するものと認定し、被控訴人に製造方法を開示する義務はないことから、十分な調査なく告知した控訴人らに過失があるとした。損害については、告知と取引中止との因果関係を認め、損害賠償金385万3032円及び遅延損害金の連帯支払を命じた原判決を維持した。