意匠権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(一審原告)は、腹筋に電気的刺激を与えるEMS型トレーニング機器「SIX PAD Abs Fit」に係る意匠権(意匠登録第1536247号)を有しており、平成27年7月から同製品を製造・販売していた。当該意匠は、薄いシート状の本体に6枚のパッド片を左右対称に2列3段で配置した形状を特徴とする。被控訴人(一審被告・株式会社ドリームファクトリー)は、平成29年1月頃から類似形状のトレーニング機器(被告商品)の譲渡受付を開始し、同年4月から販売を開始した。控訴人は、被告商品の意匠が本件意匠に類似し意匠権を侵害するとして、意匠法37条に基づく差止め・廃棄、及び同法39条2項・民法709条に基づく損害賠償を求めた。なお、控訴人は別途、被告意匠の登録無効審判を請求したが、特許庁は請求不成立とし、知財高裁でも請求棄却、最高裁も上告不受理として審決が確定していた。他方、不正競争防止法に基づく仮処分手続では、控訴人の申立てが認められ、被告商品の製造差止めが命じられている。原審(大阪地裁)は控訴人の請求をいずれも棄却し、控訴人が控訴した。 【争点】 (1) 本件意匠及び被告意匠の構成態様の認定、(2) 両意匠の類否(意匠の要部をどのように認定し、類似性を判断するか)、(3) 差止め・廃棄請求の必要性、(4) 損害額。中心的争点は意匠の要部認定と類否判断であり、控訴人は、6枚のパッド片を2列3段に配置し鍛えられた腹筋をイメージさせるという基本的構成態様自体が新規かつ斬新で要部となると主張し、パッド片の細部の形状差異は要部に含まれないと主張した。 【判旨】 控訴棄却。大阪高裁は、原審の判断を維持し、被告意匠は本件意匠に類似しないと判断した。まず要部の認定について、公知意匠にない新規な創作部分の存否は大きな考慮要素であるが、新規な創作部分であるというだけで常に要部となるわけではなく、あくまで需要者の最も注意を引きやすい部分が要部であると判示した。また、出願後の公知意匠であっても、当該形態が需要者の注意を引くかの判断に用いることができるとした。パッド片の形状や結合状態、切込みの形状・深さにも需要者の注意が注がれるのは当然であり、細部を要部から除外すべきとの控訴人の主張を退けた。類否判断については、両意匠にはパッド片の結合の仕方、対称性の違い、上下段パッド片の形状・傾斜、切込みの形状・深さ・方向等に差異があり、本件意匠が機械的・幾何学的で躍動感や力強さを感じさせるのに対し、被告意匠は自然界の羽根を想起させるやわらかで軽快な印象を与えるものであって、両意匠の美感は異なると結論づけた。