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【事案の概要】 被告(株式会社メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ)は、「二酸化炭素含有粘性組成物」に関する特許(特許第4659980号)を有していた。本件特許は、炭酸塩とアルギン酸ナトリウムを含む含水粘性組成物と、酸を含む顆粒剤等を組み合わせたキットであり、使用時に両者を混合することで気泡状の二酸化炭素を含有する粘性組成物を得るというものである。この組成物は、部分肥満改善用化粧料や、水虫・アトピー性皮膚炎・褥創の治療用医薬組成物として使用される。原告(ネオケミア株式会社)は、本件特許について特許無効審判を請求したが、特許庁は「審判の請求は成り立たない」との審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 主な争点は、本件発明が先行技術(甲1:炭酸ガス含有パック剤に関する公報)に基づいて当業者が容易に発明できたか否か(進歩性の有無)である。具体的には、(1)甲1発明のパック剤において、増粘剤であるポリビニルアルコール等をアルギン酸ナトリウムに置換する動機付けがあるか(相違点1-1)、(2)酸を含む剤の形態を含水粘性組成物から顆粒剤に変更する動機付けがあるか(相違点1-1)、(3)用途を「部分肥満改善用化粧料」等に特定する動機付けがあるか(相違点1-2)が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、相違点1-1について、甲1発明のパック剤は皮膚に塗布後に乾燥して皮膜を形成し、これを剥離して使用するものであるところ、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウムは皮膚上の皮膜形成に寄与する増粘剤であると認定した。一方、原告が周知性の根拠として挙げた甲87等は、段ボール箱や食品等の被コーティング物表面への塗膜形成に関するものであり、アルギン酸ナトリウムが人体の皮膚上の皮膜形成に寄与することについての記載も示唆もないと判断した。また、甲1発明は炭酸ガスを皮膚に直接作用させることで「短時間で」優れた血行促進作用を示すことに技術的意義があるため、二酸化炭素の気泡の保留性を高める課題を当業者が認識するとは認められないとし、アルギン酸ナトリウムへの置換の動機付けを否定した。相違点1-1の判断に誤りがない以上、その余の相違点について判断するまでもなく、本件審決の判断に誤りはないとして、原告の取消事由をすべて排斥した。