特許権侵害行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、医療機関向け情報端末システムの開発等を業とする原告が、医療機関向けコンサルティング等を業とする被告に対し、被告が医療機関に提供している「医療看護支援ピクトグラムシステム」(被告製品)が原告の2件の特許権(本件特許権1:情報処理装置等に関する特許第6407464号、本件特許権2:プログラム等に関する特許第6309504号)を侵害すると主張して、特許法100条1項に基づく被告製品の生産・譲渡等の差止め及び同条2項に基づく被告製品等の廃棄を求めた事案である。原告の特許発明は、患者のベッドサイドに設置された端末装置において、まず患者の識別情報(リストバンドのバーコード等)を読み取って患者を認証し(第1判定)、認証後に患者の医療情報を表示した上で、さらに看護師や医師の識別情報を読み取って医療スタッフを認証し(第2判定)、認証された医療スタッフが必要とする詳細な医療情報やバイタル入力画面を表示するという、二段階認証によりセキュリティを向上させた医療情報表示システムに関するものである。 【争点】 主要な争点は、(1)被告製品が本件各特許発明の技術的範囲に属するか(充足論)、(2)本件各特許発明は公知文献に基づき容易に想到できたか(進歩性欠如による無効の抗弁)であった。充足論では特に、被告製品における入院時の「患者登録」が本件発明の「第1判定」に該当するか、すなわち第1判定と第2判定の間に情報処理としての連続性が必要か否かが中心的に争われた。被告は、第1判定と第2判定は医療情報にアクセスするための連続した一連の処理であり、医療スタッフが患者情報にアクセスする都度第1判定を行うことが必須であると主張し、入院時に一度だけ行われる被告製品の患者登録は第1判定に該当しないと反論した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも認容した。第1判定と第2判定の関係について、特許請求の範囲及び明細書の記載を検討し、第2判定がされるのは第1判定で一致すると判定された場合であるが、第1判定が第2判定の直前に行われることや、第2判定の都度行われることは要求されていないと解釈した。明細書の実施形態においても、第1判定後に患者用画面が表示され、患者が一定の操作をした後に第2判定がされること、また第2判定の終了後に患者用画面に戻って再び第2判定がされ得ることが記載されていることを指摘し、被告の限定解釈を排斥した。この解釈に基づき、被告製品の患者登録は構成要件1-1A及び1-1Bを充足し、その他の構成要件も全て充足すると認定した。進歩性に関しては、主引例である乙1公報(医療情報システム)は、ベッドサイド端末識別子に基づいて患者を特定する構成であり、患者識別情報の一致判定を行う本件発明の構成を備えていないこと、副引例の乙2公報にも相違点に係る構成の開示がないことから、当業者が容易に想到できたとはいえないとして、無効の抗弁を退けた。