AI概要
【事案の概要】 本件は、いわゆる「あおり運転殴打事件」に関連するインターネット上の名誉毀損事案である。令和元年8月10日、茨城県守谷市の常磐自動車道において、男性が先行車両を停車させて運転者に暴行を加え傷害を負わせるという事件が発生し、同乗女性がその様子を携帯電話で撮影していたことが大きく報道された。事件後、ツイッター等では不特定多数の者が同乗女性を非難する投稿を行っていた。 原告は情報提供サービス等を目的とする会社の代表取締役であるが、同乗女性とは無関係の人物である。ところが、令和元年8月17日、ツイッター上に原告が同乗女性であるとするデマ記事(元ツイート)が投稿された。被告は当時愛知県豊田市の市議会議員であり、この元ツイートを引用してフェイスブック上に原告の顔写真とともに「同乗の女も見つけたようです。」「早く逮捕されるよう拡散お願いします。」等と記載した記事を投稿した。原告は、被告の投稿により同乗女性と誤認され社会的評価を低下させられたとして、慰謝料100万円及び弁護士費用10万円の合計110万円の損害賠償を請求した。 【争点】 本件では名誉毀損の成立自体は争われておらず、争点は損害の発生及びその額であった。被告は、原告が他の加害者(同様のデマを投稿した別の者)から既に和解金を受領しているため、損害の一部は填補済みであると主張した。 【判旨】 裁判所は、本件記事が原告の社会的評価を低下させるものであると認定した。一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件記事は原告があおり運転事件の同乗女性であるとの事実を摘示するものと通常理解されるとした。 損害額については、記事の内容や投稿態様等の一切の事情を総合考慮し、慰謝料30万円、弁護士費用3万円の合計33万円を認容した。 被告の損害填補の主張については、原告が不法行為として主張しているのは被告による本件記事の投稿のみであり、他の加害者による投稿を含む複数の投稿全部を不法行為としているわけではないとして、前提を欠くものとして退けた。市議会議員という公的立場にある被告がデマ情報を検証せず拡散を呼びかけた行為の責任が認められた事例である。