特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、レンズ交換式カメラの内部を清掃する装置(商品名「風塵」「FUJIN」)に関する特許権(特許第5845482号)を被告IPP株式会社と共有する原告が、被告らに対し、特許権侵害差止め等を求めた事案である。原告は本件発明の発明者であり、平成27年2月に被告IPPとの間で業務提携契約を締結した。同契約では、被告製品の製造・販売に関する協力体制や、売上高の8%相当額の「発明案使用料」の支払等が定められ、有効期間は平成28年1月31日までの1年間とされていた。契約期間満了後も、被告IPPは見守りカメラ装置の技術開発費名目で原告に月額報酬を支払いつつ被告製品の製造・販売を継続していたが、平成30年5月にこの合意も解約された。原告は、業務提携契約の趣旨として、特許権は実質的に原告に帰属し、被告IPPは原告の同意なく特許権を実施できないという特約(特許法73条2項の「別段の定」)が契約期間満了後も存続すると主張し、被告らに対し、差止め・廃棄、損害賠償710万4000円、未払ライセンス料192万円、及び被告IPPの共有持分の移転登録手続を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)業務提携契約4条及び特別条項1項が特許法73条2項の「別段の定」に当たり、契約期間満了後も被告IPPの実施権を制限するか、(2)契約期間満了後の被告製品の製造・販売等についての原告の同意(本件実施合意)の有無及びその詐欺取消しの可否、(3)損害額、(4)未払ライセンス料請求の当否、(5)特許権共有持分の移転登録手続請求の当否である。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。争点(1)について、業務提携契約の各条項の文言は、特許権が原告に排他的に帰属することを明記しておらず、被告IPPが特許出願人であることを前提とした上で出願人名の変更を認めるにとどまるものであって、被告IPPが特許権に係る権利を有することを許容する内容であると認定した。また、被告IPPが相当額の資本・労力を投下して被告製品を事業化した経緯に照らし、契約開始から僅か1年後に製造・販売等が一切できなくなるような契約を締結したとみるのは不自然・不合理であり、契約の有効期間に限った対価支払の取り決めと解するのが当事者の合理的意思に沿うと判断した。したがって、業務提携契約は期間満了により4条及び特別条項1項も含めて終了し、被告IPPは特許法73条2項に従い原告の同意なく特許権を単独実施できるとした。争点(4)のライセンス料請求についても、既に合計161万4257円の支払が完了しており、売上高がそれ以上であったと認めるに足りる証拠はないとして棄却し、争点(5)の共有持分移転登録請求についても、契約は既に終了しており、そもそも特別条項2項は出願人名の追加を認める趣旨にすぎないとして棄却した。