殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、指定暴力団甲會傘下の乙組に属する被告人が、共犯者らと共謀の上、暴力団追放運動に取り組む地域住民の代表者であった被害者夫婦の自宅に対し、真正けん銃を用いて合計6発の弾丸を発射した殺人未遂及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。平成22年3月、北九州市内に甲會関連の事務所が新設されたことを契機に、地域住民による暴力団追放パレードが実施され、被害者はその住民代表として新聞報道されていた。犯行当日深夜、被告人は共犯者Bとともに被害者宅に赴き、勝手口のドアガラスをコンクリートブロックで破壊した上で2発、さらに玄関側に回って4発の弾丸を家屋内に向けて発射した。弾丸は被害者夫婦が就寝前にくつろいでいた寝室のふすまを貫通して押入に着弾するなどしたが、いずれも被害者らに命中せず、殺害には至らなかった。 【争点】 主な争点は、(1)本件銃撃行為が殺人の実行行為に当たるか、(2)被告人が本件に関与したか、(3)被告人に殺意及び共謀が認められるかの3点であった。争点(1)について弁護人は、深夜に閉ざされた玄関戸等の外から発砲する行為は殺害の可能性が高い行為とはいえないと主張した。争点(2)について、被告人の関与を証明する証拠は共犯者Eの供述のみであり、その信用性が争われた。争点(3)について弁護人は、本件は威嚇目的であり殺意はなかったと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は全争点について検察官側の主張を認めた。争点(1)については、高い殺傷能力を有するけん銃で、居住者がいる家屋内に向けて人体の上半身に相当する高さでほぼ水平に複数発を発射した行為は、殺人の実行行為に当たると認定した。争点(2)については、E供述が客観的証拠(車両の発見状況、通話履歴等)と整合し、虚偽供述の動機もないことから高い信用性を認めた。争点(3)については、威嚇目的と殺意は矛盾しないとし、銃撃担当者が家人の在宅を認識しながら6発を発射した以上、殺意が認められるとした。被告人が自ら銃撃したか否かにかかわらず、犯行現場で不可欠な役割を果たしたことから殺意と共謀を認定した。量刑においては、暴力団追放運動に取り組む一般市民を標的とした組織的・計画的犯行の凶悪性、生命に対する危険性の高さ、被害者の精神的苦痛を重視し、求刑懲役18年に対して懲役17年を言い渡した。