裁判官に対する懲戒申立て事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2分1
- 事件名
- 裁判官に対する懲戒申立て事件
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 裁判年月日
- 2020年8月26日
- 裁判種別・結果
- 決定・その他
AI概要
【事案の概要】 本件は、裁判官である被申立人に対する懲戒申立て事件である。被申立人は、平成6年に判事補に任命され、東京高裁判事等を経て仙台高裁判事の職にあった。被申立人は、実名のツイッターアカウントにおいて、17歳の女性が殺害された強盗殺人等の刑事事件について、被告人の異常な性癖や犯行の猟奇性に着目した表現で判決を紹介する投稿を行った。これに対し、被害者の遺族が被申立人の処分を求める要望書を提出し、東京高裁長官が書面による厳重注意を行った。さらに被申立人は、平成30年に別の投稿(犬の返還請求訴訟の当事者の感情を傷つける投稿)で最高裁大法廷から戒告の裁判を受けていた。それにもかかわらず、被申立人は令和元年11月、フェイスブック上で、上記遺族が裁判官訴追委員会に訴追請求をしていることに言及した投稿を行い、その中で遺族が東京高裁事務局及び毎日新聞に「洗脳」されて被申立人を非難している旨の表現を用いた。 【争点】 被申立人の上記フェイスブック投稿が、裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」に当たるか否かが争点となった。被申立人は、遺族による抗議や訴追請求に対する自らの見解を表明するための表現行為であったと主張した。また、事情聴取の内容を記載した報告書について、分限裁判の証拠に用いられる可能性を告げられていなかったとして、証拠採用の適法性も争った。 【判旨】 最高裁大法廷は、裁判官全員一致の意見で被申立人を戒告とした。まず、「品位を辱める行状」とは、職務上の行為か私的行為かを問わず、裁判官に対する国民の信頼を損ね、又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうとの従前の判例を踏襲した。そのうえで、本件投稿における「洗脳」との表現は、あたかも遺族が自ら判断する能力がなく、東京高裁事務局等の思惑どおりに不合理な非難を続けている人物であるかのような印象を与える侮辱的なものであると認定した。自らが裁判官であることを示しつつ多数の者に向けてなされた本件投稿は、犯罪被害者遺族の心情を更に傷つけ、副次的被害を拡大させるものであり、被申立人が犯罪被害者やその遺族の心情を理解・配慮できない裁判官ではないかとの疑念を広く抱かせるものであるとした。戒告から僅か1年余り後に本件投稿に及んだ経緯に照らし、到底看過できないと判断した。