AI概要
【事案の概要】 原告は、被告(電子・電気機械器具の製造販売を業とする株式会社)に昭和54年から平成25年まで従業員として勤務していた者である。原告は、在職中の平成元年3月頃、同僚のB及びCと共同で、追記型CD-R等のディスク、ディスク記録装置及びディスク記録再生装置に関する7件の特許発明及び1件の実用新案考案(本件各発明)をした。本件各発明の核心は、リードインエリアより内周側に拡大記録領域を設け、ファイナライズまでは一時的に目次情報を記録し、ファイナライズ時にリードインエリアに最終的な目次情報を記録する構成にある。これにより、CD-DA規格及びCD-ROM規格に準拠したディスクとの互換性を保ちつつ、追記を可能にするものであった。原告は平成元年5月に特許を受ける権利の持分を被告に譲渡した。本件各発明は、CD-R/RW規格の基盤技術となり、被告はフィリップス社とのジョイント・ライセンス・プログラムを通じてライセンス収入を得るとともに、自社でも対応製品を販売した。原告は、旧特許法35条3項に基づき、相当の対価の一部として3億円の支払を求めた(主位的主張:約25億5000万円、予備的主張:約14億円)。 【争点】 主な争点は、(1)本件各発明の実施の有無、(2)本件各発明により被告が受けるべき利益(独占の利益)の額、(3)被告の使用者としての貢献度、(4)共同発明者間における原告の貢献度、(5)相当の対価の額、(6)消滅時効の成否である。特に、被告のCD-R/RWドライブ・ディスク、DVD-R/RWドライブ、DVD+Rドライブ等が本件各発明の実施品に当たるか、ライセンス収入及び自社製品販売による独占の利益の算定方法、使用者貢献度(原告主張75%、被告主張99%)が激しく争われた。 【判旨】 裁判所は、本件発明1及び2についてはCD-R/RWドライブ・ディスク等が実施品に当たると認めたが、本件発明3ないし6、発明7及び考案8については実施品の存在を認めなかった。独占の利益について、ライセンス収入に基づく利益は、ライセンス対象特許数で按分して本件各発明の貢献度を算定し、自社実施に基づく利益は、超過売上割合10%、仮想実施料率2.5%を適用して算出した。使用者貢献度については、被告がCD-MOの開発に注力しCD-Rの開発に消極的であったこと、原告に研究施設・設備・予算を提供しなかったことから発明経緯における被告の貢献は大きくないとしつつ、CD-R/RW規格の策定・発表、互換性確保活動、ライセンスポリシーに基づく広範な実施許諾等による製品普及への貢献は極めて大きいとして、95%と認定した。共同発明者間の原告の貢献度は、原告がほぼ全ての構成を着想・図面化したことから50%と認定した。相当対価は合計1297万6603円と算定され、既払額を控除した結果、1227万6603円及び遅延損害金の限度で請求を認容し、その余を棄却した。