AI概要
【事案の概要】 本件は、電子・電気機械器具の製造販売を業とする被告(大手電機メーカー)の元従業員である原告が、被告在職中に共同で行ったCD-R等の光ディスク関連の職務発明8件について、改正前特許法35条3項等に基づき、相当の対価の一部として3億円の支払を求めた事案である。原告は昭和54年に被告に入社し、音楽用CDのエラー訂正技術やCD-ROMの研究開発に従事した後、平成元年頃、他の従業員2名と共同で、追記型光ディスク(CD-R)に関する記録装置、記録再生装置及びディスクの構造に係る本件各発明を行った。これらの発明は、ディスク記録中断時に目次情報(TOC)をリードインエリア近傍の拡大記録領域に一時的に記録することで追記を可能にする技術であり、CD-R/RW規格の基幹技術となった。被告はフィリップス社と共同でこれらの規格を策定し、ジョイント・ライセンス・プログラムを通じて第三者にライセンスするとともに、自社でもCD-R/RWドライブ及びディスクを製造販売していた。原告は相当の対価が主位的に約25億5293万円、予備的に約14億134万円であると主張した。 【争点】 主要な争点は、(1)本件各発明の実施の有無(各種光ディスク製品が実施品に該当するか)、(2)被告が受けるべき利益の額(ライセンス収入及び自己実施による利益)、(3)被告の使用者としての貢献度、(4)共同発明者間における原告の貢献度、(5)相当の対価の額、(6)消滅時効の成否である。特に実施の有無については、CD-R/RWのみならずDVD-R/RW、DVD+R、MD等の各種製品への実施該当性が争われ、「線速度一定方式」や「目次情報」等の構成要件の充足性が詳細に検討された。 【判旨】 裁判所は、CD-R/RWドライブ及びディスクについては本件発明1の実施品と認め、CD-R/RWドライブについては本件発明2の実施品と認めたが、DVD-R/RW、DVD+R、MD等の製品については実施品とは認めなかった。被告が受けるべき利益の額については、ジョイント・ライセンス・プログラムによるライセンス収入と自己実施による利益の双方を認定し、自己実施については超過売上割合10%、仮想実施料率2.5%を適用した。使用者としての貢献度については、被告がフィリップス社と共に規格を策定・発表し、互換性確保活動やライセンス許諾を通じて製品の普及に大きく寄与した一方、本件発明に至るまで原告に研究施設や設備を提供しなかった経緯を考慮し、95%と認定した。共同発明者間の原告の貢献度については、原告がほぼ全ての構成を着想・図面化したことを重視し50%と認定した。消滅時効については、各発明について時効中断事由又は時効援用権の喪失を認め、いずれの請求権も消滅していないと判断した。以上から、相当対価の合計額は1297万6603円と算定され、既払の実施報奨金を控除した1227万6603円及び遅延損害金の支払を命じ、原告のその余の請求を棄却した。