意匠権侵害行為差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、自動精算機に係る部分意匠(意匠登録第1556717号)の意匠権を有する原告が、被告に対し、被告が販売するタッチパネル式券売機「VALTEC TK-1920」が原告の意匠権を侵害するとして、意匠法37条1項に基づく販売等の差止め、同条2項に基づく被告製品の廃棄、および民法709条に基づく損害賠償金1100万円(逸失利益の一部1000万円、訴訟費用の一部100万円)の支払を求めた事案である。 原告の登録意匠は、略縦長直方体の筐体上部に傾斜して設けられたタッチパネル部の正面部分を対象とする部分意匠であり、ディスプレイ周囲のケース部分が内枠部と外枠部の2段の枠部で構成され、外枠部が傾斜面を形成し、外枠部の下側部分が他の部分の約4倍の幅広に形成されている点に特徴がある。被告製品は同様にタッチパネル部を備えた券売機であり、物品の類似性については当事者間に争いがなかった。 【争点】 1. 被告意匠は本件意匠と類似するか 2. 本件意匠登録は無効審判により無効にされるべきか(意匠法3条1項3号・同条2項違反、同条1項柱書違反) 3. 原告の損害額 【判旨】 裁判所は、本件意匠と被告意匠の基本的構成態様(上方を後方に傾斜させた縦長長方形状のディスプレイとケース部分からなるタッチパネル部の正面部分)は一致すると認定した。しかし、出願前の公知意匠(韓国意匠商標公報に記載された3件の意匠)を検討した結果、基本的構成態様やタッチパネル部の縦横比、2段枠部構成といった構成態様は既に知られていたと認定し、需要者の注意を特に惹きやすい部分とはいえないと判断した。 その上で、注意を惹きやすい部分は具体的構成態様のうちケース部分外枠部の傾斜面(構成態様C)と外枠部下側の幅広形状(構成態様D)であるとした。被告意匠はケース部分が扁平な枠部で構成され傾斜面を全く有せず、上下左右の幅も全て等しいことから、これらの差異は基本的構成態様の共通から受ける印象を凌駕するものであり、両意匠は全体として異なった美感を有すると認定した。 また、原告が主張する筐体との位置関係(タッチパネル部の幅と筐体幅の比率等)については、破線で示された筐体の形状を部分意匠の形状そのものとして主張するものであり、部分意匠の趣旨に照らして採用できないとした。結論として、被告意匠は本件意匠に類似しないとして、その余の争点を判断するまでもなく原告の請求をいずれも棄却した。