石垣市平得大俣地域への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票実施義務付け等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 石垣市の有権者である原告ら(住民投票実施請求の代表者27名及び署名者3名の計30名)は、石垣市平得大俣地域への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の実施を求めた。原告らは、平成30年12月、石垣市自治基本条例28条1項に基づき、有権者総数3万8799名の4分の1以上となる1万4263名の有効署名を集めて石垣市長に住民投票の実施を請求した。石垣市長は、本件実施条例案と概ね同内容の条例案を市議会に付議したが、市議会は平成31年2月及び令和元年6月に2度にわたりこれを否決した。それにもかかわらず石垣市長が住民投票を実施しないのは同条例28条4項(「市長は、第1項の規定による請求があったときは、所定の手続を経て、住民投票を実施しなければならない」)に違反し違法であるとして、原告らは被告石垣市に対し、主位的に不作為の違法確認及び申請型義務付け(行政事件訴訟法37条・37条の3)を、原告A1は予備的に非申請型義務付け(同法37条の2)を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)住民投票の実施が行政事件訴訟法上の義務付けの訴えの対象となる「処分」に当たるか(処分性)、(2)本件実施請求が同法上の「申請」に当たるか、(3)予備的請求における原告A1の原告適格の有無、(4)重大な損害のおそれの有無、(5)補充性の有無、(6)市長の住民投票実施義務の明白性であった。原告らは、住民投票の実施により有権者に政策意思を表明する権利・投票権が付与されるから処分性がある等と主張した。被告は、住民投票の結果に法的拘束力はなく事実行為にすぎないと反論した。 【判旨】 裁判所は、争点(1)の処分性を否定し、原告らの訴えをいずれも却下した。その理由は次のとおりである。住民投票の実施過程において、直接個々の市民の権利を形成する法的効果を生ずる行為は、投票資格者名簿の調製であり、それに至るまでの規則等の制定や住民投票の執行は、いまだ直接個々の市民の権利を形成するものとはいえない。投票資格者の確定は投票日の告示前日の時点でなされるため、投票日が定められていない段階では有権者の法的地位自体も不確定である。さらに、石垣市には住民投票の実施手続を規律する条例・規則が存在せず、これは憲法改正の投票規定はあるが国民投票法が未制定である状態に類比できるものであって、処分の根拠となる法令自体が欠けている。規則等の制定と住民投票の実施を「一体として」処分とみる原告らの主張についても、行政事件訴訟法が一般的規範の制定と個別処分を合わせて義務付けることを許容しているとは解されないとして退けた。