AI概要
【事案の概要】 本件は、昭和41年に創作された矢田部ギルフォード性格検査(YG性格検査)の検査用紙について著作権を共有しているとする控訴人が、被控訴人(日本心理テスト研究所株式会社)に対し、被控訴人が発行・販売する検査用紙が著作権(複製権及び譲渡権)を侵害しているとして、差止め・廃棄及び損害賠償金2640万円の支払を求めた事案の控訴審である。 YG性格検査は、心理学者であるP2が創作した性格検査であり、控訴人(P2の子)はその実用化に長年携わってきた。P2は被控訴人の設立に関与し、控訴人が被控訴人の代表者を務めていたが、後に控訴人は被控訴人の役員から離任・解任された。P2は平成13年に死亡し、公正証書遺言及び自筆証書遺言を残したが、いずれも本件著作権の帰属について明確な記載はなかった。原審は、控訴人が著作権の共有者であることは認めたものの、被控訴人はP2から無償の利用許諾を得ているとして、請求をいずれも棄却した。 【争点】 (1) 本件著作権の帰属:P2の遺言により被控訴人に著作権が帰属したか。被控訴人は、P2が検査用紙に「ⓒ日本心理テスト研究所」と付記することを容認していたことなどから、将来被控訴人に著作権を帰属させる意思があったと主張した。 (2) P2から被控訴人への利用許諾の有無:控訴人は、P2の意思の合理的解釈からは被控訴人への利用許諾は認められないと主張し、仮に黙示の許諾契約が成立したとしても、P2又は控訴人による助言・監修が条件であったと主張した。また、許諾の範囲は昭和41年用紙の体裁のままの利用に限られ、体裁の異なる被告各用紙の発行は許諾の範囲外であるとも主張した。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は以下のとおり判断した。 著作権の帰属について、P2が著作権表示の付記を容認していたのは、利用許諾をしていた上に控訴人との良好な親子関係があったためであり、著作権を被控訴人に譲渡する意思がなくとも不自然ではないとして、被控訴人への著作権帰属を否定した。著作権はP2の相続人が法定相続分に従い共同相続したと認定した。 利用許諾について、被控訴人の設立前から控訴人が事業主として昭和41年用紙を使用しており、法人化はその事業の拡充強化のためであったから、被控訴人設立に当たりP2との間で利用許諾契約が成立したと認定した。許諾の内容は、被控訴人がYG性格検査に関する事業を行うために利用する必要がある期間において、その事業のための利用といえる範囲での無償許諾であり、無期限でも無制限でもないとした。P2の助言等を許諾契約の内容とする必要は認められず、また、被控訴人設立以来P2の生前から用紙の体裁に変更を重ねてきた経緯に照らし、体裁どおりの利用に限定する合意があったとも認められないとした。以上から、被控訴人は利用許諾の範囲内で被告各用紙を発行しており、著作権侵害は成立しないと結論付けた。