AI概要
【事案の概要】 本件は、被告学校法人が設置する大学の女子ソフトボール部でキャプテンを務めていた原告(女性)が、同部の監督であった被告A(当時73歳・男性)から、合宿所の監督室において膝の上に座らせられて身体を密着させられたり、胸や太ももを触られたり、「男女の関係は愛だよ」「おれは原告を女性として見ている」「脱げと言ったら脱げるんだよ」等の性的発言をされたり、複数回にわたり抱擁行為をされるなどのセクシャルハラスメント行為を受け、PTSD等を発症したとして、被告Aに対しては不法行為に基づく損害賠償を、被告学校法人に対しては使用者責任等に基づく損害賠償を求めた事案である。原告は、被告Aの指導を受けるために他大学を中退して入学し直した経緯があり、監督と選手という強い支配従属関係の下で被害を受けた。また原告は、被告法人の理事長である被告C及び副学長である被告Eが、セクハラ行為について十分な調査・説明を怠り、被告Aに適切な処分をしなかったとして、被告法人らに対しても損害賠償を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)被告Aのセクハラ行為の有無及び不法行為の成否、(2)被告法人の使用者責任の有無、(3)被告法人らのセクハラ行為後の対応に係る不法行為責任の成否、(4)因果関係及び損害額である。被告Aは、膝の上に座らせたことや肩を叩いたことは認めつつ、それ以外の行為を否認し、学長による約5時間の詰問で虚偽の自白を強いられたと主張した。 【判旨】 裁判所は、争点(1)について、原告が被害直後に先輩女性にLINEで被害内容を伝えていたこと、その後もカウンセラーや医師に一貫して同旨の報告をしていたこと、原告が被告Aの指導を受けるために入学し直しており虚偽の報告をする動機がないこと等から、原告の供述の信用性は高いとして、膝の上に座らせて身体を密着させた行為、胸・太もも・頬を触った行為、性的意図を含む発言、口止め発言、複数回の抱擁行為等を認定した。ただし、膝の上に座らせた時間は被告Aの年齢や膝の状態から数分程度と認定し、「好きになってほしい」との発言は証拠が不十分として認めなかった。これらの行為は原告の性的自己決定権を侵害する違法な行為であり、口止めをしていた点からも性的意図をもって故意に行われたと認定した。争点(2)については、本件部活動が被告法人の事業の一部であり、施設内で監督と部員の関係を利用して行われたとして使用者責任を認めた。争点(3)については、被告Aを総監督に復帰させたこと、調査報告書の開示に条件を付したこと等はいずれも不法行為を構成しないとした。損害については、被害態様が着衣の上からの接触等にとどまること、原告が以前からキャプテンとしてのストレスや不眠症状を抱えていたことなどを考慮し、慰謝料70万円、治療費約2万円、弁護士費用約7万円の合計79万2440円を認容した。