AI概要
【事案の概要】 原告(積水化学工業株式会社)は、「両面粘着テープ、車載部品固定用両面粘着テープ、及び、車載用ヘッドアップディスプレイカバー固定用両面粘着テープ」に関する特許(特許第6370477号、請求項数7)の特許権者である。本件特許に対し3件の特許異議の申立てがなされ、特許庁は令和元年11月20日、請求項1ないし7に係る特許を取り消す旨の決定をした。本件特許の請求項1は、基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープであって、基材がポリプロピレン系樹脂を含有する発泡体からなり、基材の厚み、結晶融解温度ピーク(140℃以上)、発泡倍率(15cm3/g以下)、気泡のアスペクト比(0.9〜3)を発明特定事項とするものである。原告は本件決定の取消しを求めて訴えを提起した。 【争点】 (1) 明確性要件の判断の誤り(取消事由1):「示差走査熱量計により測定される結晶融解温度ピークが140℃以上」の記載が、複数のピークが存在する場合にいずれを指すか不明確か。 (2) 実施可能要件の判断の誤り(取消事由2):厚み・結晶融解温度ピーク・発泡倍率・気泡のアスペクト比の4条件を同時に満たす発泡体を、当業者が過度の試行錯誤なく製造できるか。 (3) サポート要件の判断の誤り(取消事由3):実施例で用いられた特定のポリプロピレン系樹脂以外を使用した場合も含め、請求項の全範囲で課題を解決できると当業者が認識できるか。 【判旨】 裁判所は、取消事由1〜3のいずれも理由があるとして、本件決定を取り消した。 明確性要件(取消事由1)について、「結晶融解温度ピークが140℃以上」とは、示差走査熱量計による測定結果のグラフのピーク(頂点)が140℃以上に存在することを意味し、複数のピークがある場合のピークの大小は問わないと解した。実施例1〜7の発泡体がポリプロピレン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレンの混合物であり、140℃以上のピーク以外に140℃未満のピークを含むことは技術常識から容易に理解でき、記載は不明確とはいえないとした。 実施可能要件(取消事由2)について、結晶融解温度ピークの調整にはポリプロピレン系樹脂の含有量が、発泡倍率の調整には発泡剤の含有量が、気泡のアスペクト比の調整には厚みの調整及び延伸がそれぞれ重要であることを実施例等から理解でき、各数値範囲に設定することが過度の試行錯誤を要するとはいえないとした。 サポート要件(取消事由3)について、本件発明はパラメータ発明に当たらず、本件明細書の実施例・比較例の記載及びポリプロピレン系樹脂が耐熱性・機械的強度に優れるとの技術常識に照らし、当業者は本件発明の課題を解決できると認識できるとした。