保護責任者遺棄致死
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、夫であるA及び当時5歳の被害児童と同居していたところ、平成30年1月下旬頃から、Aと共に被害児童に対し必要十分な食事を与えず、栄養失調状態に陥らせた。被害児童の体重は約1か月余りで約25パーセント減少し、異常な痩せ方をしていた。同年2月27日頃には被害児童が嘔吐し極度に衰弱したが、被告人はAと共謀の上、虐待の発覚を恐れて医師の診察等の医療措置を受けさせず、同年3月2日、被害児童を低栄養状態及び免疫力低下に起因する肺炎に基づく敗血症により死亡させた(保護責任者遺棄致死)。原審は被告人を懲役8年(求刑懲役11年)に処し、被告人側が訴訟手続の法令違反及び量刑不当を主張して控訴した。 【争点】 (1) 原審がB医師による精神鑑定請求を却下し、証言範囲を制限した訴訟手続に法令違反があるか。 (2) Aからの心理的DVの影響により被告人の適法行為の期待可能性が著しく減退していたか。被告人を懲役8年に処した原判決の量刑は重すぎて不当か。 【判旨(量刑)】 控訴棄却。原判決の懲役8年を維持した。 訴訟手続の法令違反の主張について、裁判所は、被告人の心理状態及び非難可能性の程度は、本件に至る経緯が明らかにされることにより、精神鑑定によらずとも裁判官及び裁判員が一般的知識・経験に基づいて判断できるとした原審の判断に裁量の逸脱はないとした。 量刑不当の主張について、裁判所は以下のとおり判断した。被告人がAから心理的DVを受け、その心理的影響を強く受けていた状態にあったことは認めつつも、被告人はAの暴力に対しやめるよう言ったり離婚を切り出したりしたこと、Aの目を盗んで被害児童に食事を与えていたこと、早起きの課題をごまかしていたこと等から、Aにより心理的に強固に支配されていたとまではいえないとした。特に、被害児童が要保護状態に陥って以降はAの態度も軟化し、被告人自身もAに外出を求めるなどできていた一方、被害児童の衰弱状況は明らかであったから、Aの心理的影響を乗り越えて被害児童を助ける契機があったと認定した。また、弁護人が主張する浴槽閉じ込め事件後の解離性健忘についても、2月27日頃以降の被害児童の重篤な状態を被告人が認識していた事実に照らし、適法行為の期待可能性が著しく減退していたとはいえないとした。結論として、原判決の量刑事情の認定・評価及び刑の量定は相当であるとした。