建造物侵入,強盗傷人被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、かつて勤務していた警備会社の従業員が現金輸送中に所持する数千万円の現金を強奪することを企図し、2か月以上前からスタンガンや変装用かつらを購入し、現金輸送車の尾行を繰り返すなどの周到な準備を行っていた。令和2年5月22日午前11時55分頃、被告人は札幌市内の店舗1階ATMコーナー裏通路に無施錠のドアから侵入し、現金装填作業中の警備員(当時56歳)に対し、いきなり右目付近を手拳で殴打し、転倒した同人に馬乗りになった上、スタンガンを放電状態にして右前腕部・右腰付近・右足に合計4回押し当てて感電させるなどの暴行を加えた。被告人は反抗を抑圧した上で現金を強取しようとしたが、被害者に抵抗されたため目的を遂げなかった。被害者は全治約2週間の顔面打撲、右眼球打撲及び右前腕電撃傷の傷害を負った。犯行動機は生活費欲しさであり、約4年前に得た約3000万円の退職金を使い果たしていたことが背景にある。 【争点】 被告人が被害者の右目付近を手拳で殴打し、転倒して仰向けになった被害者に馬乗りになったか否かが争われた。被告人は、被害者を殴ったことはなく、被害者がタックルしてきた際に右目が自分の頭に当たって負傷した可能性があると主張した。また、スタンガンの使用態様についても、被害者の頭を右脇の下に抱えた状態で右手に持つスタンガンを放電したと供述し、検察側の主張する暴行態様を争った。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被害者証言について、振り向きざまに頭蓋骨に響き渡るような強い衝撃があったとの具体的説明は犯人から受けた最初の攻撃として特に印象に残りやすい出来事であり勘違いが生じるとは考えにくいとした。また、右目付近の皮下出血の程度が重いことや、医師が凹凸のある手拳で殴られて生じた可能性が高いと証言したことも踏まえ、被害者証言の信用性を高く評価した。一方、被告人供述については、被害者の負傷部位がぶつかるような姿勢でタックルすることは不自然であること、公判で初めてその可能性を指摘した供述経過が不自然であることなどから信用できないと判断した。量刑判断においては、高電圧のスタンガンを合計4回押し当てるという危険かつ悪質な犯行態様、2か月以上の周到な準備と多額の現金を狙う強固な犯意を重視しつつ、被害者のけがが比較的軽いこと、約12万円の被害弁償の申出、前科前歴がないこと、反省の弁と更生の意欲を示していることなどを考慮し、検察官の求刑懲役7年に対し、懲役6年を言い渡した。