AI概要
【事案の概要】 被告人(母親)は、交際相手A及びその知人Bと自宅で同居生活を始めた後、平成29年12月中旬頃から同月25日までの間、当時4歳の長男C及び当時2歳の二男Dに対し、A・Bと共謀の上、顔面や腹部等を拳骨・平手で多数回殴打するなどの暴行を繰り返した。12月24日夕食後には、Cの腹部に強い衝撃を与える暴行が加えられ、腸間膜破裂による腹腔内出血でCは翌25日未明に死亡した。被告人は救急車を要請したが、Cの全身には多数の打撲痕があり、同日保護されたDにも多発打撲等が認められた。A・Bは犯行を認めて判決が確定したが、被告人は実行行為も共謀も全面的に否認し、第一審で懲役9年の判決を受けて控訴した。控訴趣意は、共謀の事実誤認、傷害罪と傷害致死罪を併合罪とした法令適用の誤り、及び量刑不当の3点であった。 【争点】 第一の争点は、被告人とA・Bとの間に共謀が成立するかである。被告人は、しつけとして軽くたたく程度のことをAらにも認めただけで、傷害を生じさせるような暴行は制止していたと主張した。第二の争点は、Cに対する傷害罪と傷害致死罪が包括一罪か併合罪かという罪数関係であった。 【判旨(量刑)】 控訴審は、第一の争点について控訴を棄却した。原審に証人出廷したA・Bは、被告人が同居当初から日常的にCやDに暴力を振るい、「しばいて」等とAらにも暴力を求めていたこと、12月中旬以降暴行がエスカレートしても制止しなかったことを一致して供述しており、これらはC・Dの身体の打撲痕や保育所を休ませていた経緯等の客観的事実と整合するとして信用性を認めた。被告人が交際相手に送った「Cの顔見てびっくりせんといてね笑」というメッセージについても、負傷への非難や心配が読み取れず深刻さがないとして、暴行容認の根拠とした原判決は正当であるとした。 第二の争点については、弁護人の主張を正当と認め、Cに対する傷害と傷害致死は同一被害者に対する時間的に連続した同質の暴行であり、包括一罪としての傷害致死罪と評価すべきであるとした。ただし、包括一罪としても二男Dに対する傷害罪との併合罪処理後の処断刑の範囲は原判決と変わらず、判決に影響を及ぼさないとした。 量刑については、逃げ場のない幼い子供たちへの一方的な暴行の反復は悪質であり、母親として守るべき立場にありながら共犯者らとの生活のストレスを子らへの虐待で発散させた経緯に同情の余地はなく、懲役9年は同種の児童虐待類型の量刑傾向に沿うものであるとして、控訴を棄却した。