AI概要
【事案の概要】 原告らは、築地市場で水産仲卸業を営んでいた事業者及びその役員であり、平成30年10月の豊洲市場への移転に伴い、豊洲市場内の水産仲卸売場棟(本件建築物)で営業又は勤務している者である。原告らは、本件建築物が建築基準法令の規定に違反していると主張し、特定行政庁である東京都知事に対し、建築基準法18条25項に基づき、本件建築物を管理する東京都の長である東京都知事に違反建築物である旨を通知し、使用禁止及び除却の措置をとることを要請すべき義務があるとして、その義務付けを求めて提訴した。なお、原告らは本案訴訟に先立ち仮の義務付けを申し立てたが、義務付けの対象が行政処分に該当しないとの理由で却下され、最高裁への特別抗告等も棄却されていた。 【争点】 主要な争点は、建築基準法18条25項に基づく通知及び要請が抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するか否かである。同法は、民間の建築物については特定行政庁が是正命令(9条1項)を発することができるのに対し、国又は都道府県等が所有・管理する建築物については是正命令の適用を排除し、特定行政庁から管理者への通知及び要請にとどめる仕組みを採用している。原告らは、通知及び要請を受けた国等には是正措置をとる法的義務があり処分性が認められると主張したほか、医療法上の病院開設中止勧告に処分性を認めた最高裁平成17年判決を援用して処分性を主張した。 【判旨】 裁判所は、本件訴えをいずれも不適法として却下した。その理由として、まず、法が国又は都道府県等の建築物について是正命令の適用を排除し通知及び要請にとどめたのは、これらの者が自ら建築行政の主体たる地位を有し、自ら建築基準法令適合性や是正の要否を判断すべき立場にあることに鑑みたものであると解した。そして、法18条25項に基づく「通知」は違反の旨を知らせる事実行為にすぎず、「要請」も任意の是正措置を促す行為にとどまり、国等に対し是正措置をとることを義務付ける法的効果を有しないとした。是正命令の場合に設けられている意見聴取手続(9条2項〜9項)が、18条25項の通知及び要請には置かれていないことも、この解釈を裏付けるとした。原告らが援用した最高裁平成17年判決についても、同判決は勧告に従わなければ保険医療機関の指定を受けられないという実質的効果があった事案であり、法的義務を生じない本件の通知及び要請とは事案を異にすると判断した。