AI概要
【事案の概要】 被告人は、母親から弟妹の育児等を押し付けられていたが、軽度知的障害(知能・発達年齢は概ね9歳から10歳程度)の影響もあり、そのような家庭環境から自力で逃れることができず、不満を募らせていた。被告人は、平成31年4月2日、大阪市内の自宅において、弟であるA(当時3歳)の腹部を足で踏みつける暴行を加え、腹部圧迫による下腸間膜動脈裂傷等の傷害を負わせ、失血により同日死亡させた。傷害致死罪で起訴された事案である。 被告人の家庭環境は劣悪であり、父親から幼少期に暴力を受け、母親からは弟妹への暴力を指示されるなど、暴力肯定的な環境で生育していた。弟らの世話を押し付けられたことが知的障害を有する被告人にとって過度の負担となっていたが、両親に逆らうことができなかったという経緯がある。検察官は懲役5年を求刑した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役3年・執行猶予5年に処した。 まず、何ら落ち度のない3歳の被害者の命を失わせた結果は重大であり、幼児の腹部を踏みつけるという犯行態様も、体格の違いを考慮すれば重篤な傷害を負わせる可能性が高い危険なものであるとした。しかし、精神鑑定の結果、被告人は軽度の知的障害を有し、知能・発達年齢が概ね9歳から10歳程度と診断されていることから、自らの行為の危険性を十分に認識していたとは認め難いと判断した。 犯行の経緯・動機については、劣悪な家庭環境に置かれる中、知的障害の影響により自力で逃れることができず犯行に及んだ点は相応に酌むべき事情であるとし、同種事案との比較では中程度より軽い部類に属し、実刑と執行猶予いずれの選択肢もあり得る事案と位置付けた。 その上で、被告人については両親と別居するためのグループホームへの入居の目処が立っていること、後見人が選任され福祉の援助が見込まれる手厚い支援体制が構築されていること、被告人なりに反省の態度を示していること、前科がないことなどの事情を考慮し、直ちに実刑に処すべきとまでは認め難いとして、執行猶予付きの判決を言い渡した。