AI概要
【事案の概要】 老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給者である原告ら(約700名)が、平成24年改正法及び平成25年政令に基づき厚生労働大臣が行った年金額の減額改定処分(本件各処分)の取消しを求めた行政訴訟である。 平成12年度から平成14年度にかけて、物価指数が下落したにもかかわらず、社会経済情勢に鑑みて物価スライドによる年金額の引下げを行わない特例措置が講じられた結果、法律上予定されていた「本来水準」より1.7パーセント高い「特例水準」の年金が支給されることとなった。その後も物価・賃金の下落傾向が続き、平成23年度には本来水準と特例水準の差が最大2.5パーセントにまで拡大した。こうした状況を受け、平成24年改正法により、平成25年度から平成27年度までの3年間で段階的に特例水準を解消することとされ、平成25年度には1パーセントの減額改定が実施された。原告らは、同改正法が憲法13条、25条、29条及び社会権規約に違反し、平成25年政令が内閣の裁量権を逸脱・濫用したものであるとして、本件各処分の取消しを求めた。 【争点】 1. 一部原告の訴えの適法性(再審査請求の期間徒過の有無) 2. 平成24年改正法が憲法25条及び社会権規約に違反するか 3. 同法が憲法29条(財産権保障)に違反するか 4. 同法が憲法13条(幸福追求権)に違反するか 5. 平成25年政令が内閣の裁量権の範囲を逸脱・濫用したものであるか 【判旨】 裁判所は、一部原告の訴えを却下し、その余の原告らの請求をいずれも棄却した。 争点1について、再審査請求書の発送が審査官の決定書受領日の翌日から60日を経過した後であった原告らの訴えは、適法な再審査請求を経ていないとして不適法とした。 争点2について、憲法25条の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかは立法府の広い裁量に委ねられており、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ない場合を除き司法審査に適しないとの判断枠組みを示した上で、平成24年改正法は、当初から解消が予定されていた特例水準を3年間で段階的に解消し、年金財政の安定化と将来世代の給付水準の維持を図るものであり、その目的・内容は著しく合理性を欠くとはいえないとした。社会権規約についても、同規約9条は個人に即時に具体的権利を付与するものではなく、立法府の裁量を羈束するものではないとした。 争点3について、規制の目的、必要性、内容及び制限の程度等を比較考量し、特例水準を本来水準に是正するにすぎない平成24年改正法は公共の福祉に適合するとした。 争点4について、同法の目的・内容に著しい不合理はなく、憲法13条に違反しないとした。 争点5について、平成25年政令は平成24年改正法の委任の趣旨に従い機械的に率を定めたものであり、裁量権の逸脱・濫用はないとした。