特許料納付書却下処分取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(山崎産業株式会社)は、保有する3件の特許権(特許第4763758号、第4889443号、第4942437号)について、第4年分の特許料及び割増特許料を所定の期限までに納付せず、特許法112条1項の追納期間も徒過した。そこで控訴人は、同法112条の2に基づき特許権の回復を求めて特許料納付書を特許庁長官に提出したが、いずれも手続却下処分を受けた。納付遅延の原因は、控訴人が保有する特許権等の管理業務を特許事務所からデンネマイヤー社に移管する際、移管後に成立した本件各特許権の管理主体が不明確となり、担当者Aが特許事務所からの問い合わせに「少し待ってください」と答えたまま長期間放置したことにあった。控訴人は、本件各処分は同条項所定の「正当な理由」の解釈適用を誤った違法な処分であると主張して、その取消しを求めた。原審(東京地裁)は控訴人の請求をいずれも棄却し、控訴人が知的財産高裁に控訴した。 【争点】 特許法112条の2第1項にいう「正当な理由」の解釈と、控訴人が追納期間内に特許料を納付できなかったことについて同条項の「正当な理由」が認められるか。具体的には、(1)同条項はPLT(特許法条約)12条(1)(iv)の「Due Care(相当な注意)」よりも緩やかな基準を採用したものか、(2)中小企業の規模や管理体制を考慮して「正当な理由」を認めるべきか、が争われた。 【判旨】 知的財産高裁は控訴を棄却した。まず「正当な理由」の解釈について、平成23年改正ではPLTにおける「Due Care」の概念が採用され、「正当な理由があるとき」とは、原特許権者(代理人を含む)として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて追納期間内に特許料等を納付できなかったときをいうと判示した。このように解しても改正前より厳しい要件となるものではなく、PLTにも反しないとした。次に、担当者Aの対応について、移管後成立権利の管理主体が不明となる危険性が高い状況にありながら、長期間にわたって何らの検討や確認もせず特許事務所が管理するものと軽信していたとして、担当者として然るべき注意を払っていたとは到底評価できないとした。さらに、控訴人の管理体制についても、大掛かりな移管手続の実施にあたり特許管理室の体制強化等の特別な措置を講じた形跡がなく、偶発的なミスとはいえないと判断した。控訴人が中小企業であるとの主張についても、資本金約5億8000万円、従業員約400名、年間売上高約150億円の一定以上の規模の法人であり、管理責任を軽減すべき事情はないとして退けた。