発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告ら(夫婦)が、被告(ソフトバンク株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報の開示を求めた事案である。原告Aは、妻である原告Bと共に蕎麦屋「角平」を訪れた際に原告Bを被撮影者として動画を撮影し、文字を挿入するなどの加工を施した上で、インスタグラムの24時間限定で表示される「ストーリー」機能を利用して投稿した。ところが、氏名不詳者がこの動画を入手し、動画の一部を静止画像として保存した上で、「ホストラブ」という掲示板に、原告Bの名をもじった「みみくそ」という呼称と共に「ねーねーまたブランド買ってよーー。Byみみくそ。」という投稿を行った。原告らは、掲示板管理者から本件投稿に係るIPアドレスの開示を受け、同アドレスを割り当てていた被告に対し、発信者の氏名及び住所の開示を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)原告Aの著作権(複製権・公衆送信権)侵害の明白性、(2)原告Bの肖像権侵害の明白性、(3)原告Bの名誉権侵害の明白性、(4)開示を求める情報が権利侵害に係る発信者情報に該当するか、(5)損害賠償請求権行使のための必要性であった。被告は、動画が原告Aの著作物であるか不明であること、原告Bがインターネット上での公開に黙示の承諾を与えていたこと、投稿内容から原告Bが特定できず社会的評価の低下もないこと等を主張して争った。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも認容した。争点(1)について、本件動画は原告Aがその思想等を創作的に映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で表現したものであり著作物に該当するとし、氏名不詳者が無断で動画の一部を複製・送信可能化したことにより、原告Aの著作権が侵害されたことは明らかであると判断した。争点(2)について、裁判所は、本件動画は24時間限定の保存態様で投稿されたものであり継続的な公開は想定されていなかったこと、原告Bは氏名不詳者に対し肖像の利用を許諾していないこと、原告Bは私人であること、投稿の態様が著作権侵害を伴う不相当なものであること、投稿内容に照らし正当な目的や必要性が認められないこと等を総合考慮し、社会生活上受忍すべき限度を超えるとして肖像権侵害を認めた。なお、名誉権侵害(争点(3))については、著作権侵害及び肖像権侵害が認められたことから判断せず、その余の争点も含めて原告らの請求を全部認容した。