AI概要
【事案の概要】 原告(味の素株式会社)は、「アミノ酸生産菌の構築方法及び構築されたアミノ酸生産菌を用いる醗酵法によるアミノ酸の製造法」に関する特許権(本件特許権1・特許第3651002号)及び「L-グルタミン酸生産菌及びL-グルタミン酸の製造方法」に関する特許権(本件特許権2・特許第5343303号)の特許権者である。被告は、韓国のCJグループに属する日本法人であり、同グループのインドネシア法人(CJインドネシア)が発酵法により製造したグルタミン酸ナトリウム(MSG)を日本に輸入・販売していた。原告は、被告製品の製造に用いられた製法(被告製法1ないし4)が本件各特許の技術的範囲に属すると主張し、特許法100条に基づく差止め・廃棄、及び特許権侵害の不法行為による損害賠償金9億9000万円の支払いを求めた。被告は、製法の使用時期・態様を一部争うとともに、均等侵害の成否、本件各特許の無効事由の存在を主張して争った。 【争点】 主な争点は、(1)被告各製法の使用の有無及び使用時期、(2)被告各製法が本件各特許の技術的範囲に属するか(特に被告製法4について均等侵害の成否)、(3)本件各特許の進歩性欠如・実施可能要件違反等の無効事由の有無、(4)訂正の再抗弁の成否、(5)損害額、(6)差止め・廃棄請求の当否である。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を大部分認容した。まず使用菌株について、原告が入手した家畜用飼料(PROMATE)の分析結果から、被告が認めた期間以外にも被告製法1が使用されていたと認定した。被告製法1及び3は本件発明1・2の技術的範囲に文言上属し、被告製法4についても均等侵害を認めた。均等の第1要件(非本質的部分)につき、本件発明2の本質的部分はコリネ型細菌由来のyggB遺伝子にA100T変異に相当する変異を導入してグルタミン酸生産能力を向上させる点にあるとし、被告製法4との相違点は非本質的部分に係るものと判断した。被告が主張した無効事由(進歩性欠如、実施可能要件違反等)については、訂正後の発明に基づく再抗弁が成立するとして、いずれも排斥した。損害額については、特許法102条2項により被告らの限界利益合計約38億5731万円を算定した上で、競合品の存在を考慮して50%の推定覆滅を認め、損害額を約19億2865万円と認定した。本件特許権1は存続期間満了により差止請求を棄却したが、本件特許権2に基づく差止め・廃棄請求は認容した。結論として、損害賠償9億9000万円全額及び遅延損害金の支払いを命じた。