公務外認定処分取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 天草市立小学校で教諭として勤務していた控訴人(原告)は、算数のチームティーチング教員として1校時から5校時までほぼ全ての時間に授業を担当していたほか、研究主任として校内研修の企画・立案・資料作成、研究紀要の原稿作成、「チャレンジよみもの」等の学習プリント作成、部活動の指導・引率など多岐にわたる業務を並行して処理していた。控訴人は平成23年12月14日、勤務中に呂律が回らなくなり、左手のしびれやふらつきを自覚した後、帰宅後に意識を消失して救急搬送され、脳幹部出血と診断された。控訴人は、この発症が公務に起因するものであるとして地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定請求を行ったが、処分行政庁は公務外認定処分をした。控訴人がその取消しを求めて提訴したところ、原審(熊本地裁)は請求を棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、控訴人の脳幹部出血の発症と公務との間に相当因果関係(公務起因性)が認められるかである。具体的には、(1)発症前1か月間及び2か月目の校内時間外労働時間の算定(昼休憩時間を15分・30分・45分のいずれとすべきか、通常の出勤時刻の認定)、(2)自宅における作業時間の認定方法(パソコンの起動・スリープ記録やファイル作成記録をどのように評価するか)、(3)高血圧症の既往や子どもの看病による生活リズムの乱れといった業務外の要因が発症原因といえるか、が争われた。 【判旨】 福岡高裁は原判決を取り消し、公務外認定処分を取り消した。裁判所は、昼休憩時間について、控訴人が昼休みに公務に従事することを余儀なくされていた実態を認めつつも、その頻度・時間が不明であることから、発症前1か月間は平均して1日15分程度公務に従事したとして休憩時間を30分と認定した。出勤時刻は調査票等の記録から午前7時40分と認定した。自宅作業時間については、公務関連の文書ファイルの作成・更新記録が認められる時間を基準として、発症前1か月間に41時間55分と認定した。その結果、発症前1か月間の時間外労働は合計93時間01分と認められた。これは認定基準の月100時間には達しないものの、これに近い時間数であり、発症前2週間はいずれも週25時間超の時間外労働があったこと、発症前6か月間にわたり恒常的に長時間労働が継続していたこと、職場で終わらない業務を自宅に持ち帰らざるを得ず睡眠時間が削られていたこと、休日も部活動引率により休息が妨げられていたこと等を総合考慮し、控訴人の業務は血管病変等を自然経過を超えて増悪させ得る過重な負荷であったと判断した。高血圧症の既往については、軽症で治療を指示されたこともなく、発症寸前の状態にまで増悪していたとは認められないとし、子どもの看病による影響も限定的であるとして、被控訴人の反論をいずれも退けた。