AI概要
【事案の概要】 原告は、警備会社を複数経営する者である。被告会社が発行する週刊誌「週刊B」に、被告個人(フリージャーナリスト)が執筆した記事(本件記事)が掲載された。本件記事は、「警察の闇 暴力団の破門状事件めぐり京都府警が過去を隠した男」と題し、原告が指定暴力団山口組の傘下組織である淡海一家の元組員であるとの事実を摘示するとともに、原告の経営する警備会社が公共工事の警備業務を受注していること、京都府警の元警察官が同社の役員に就任していること等を指摘し、京都府警と原告との癒着疑惑を報じるものであった。原告は、本件記事が名誉を毀損したとして、被告会社及び被告個人に対し、共同不法行為に基づく損害賠償1億1000万円(慰謝料1億円、弁護士費用1000万円)の連帯支払を求めた。なお、本件記事に先立ち、別の週刊誌にも同様の内容の記事(E記事)が掲載されていたが、E記事では原告は仮名で報じられていたのに対し、本件記事では実名が公表されていた。 【争点】 主な争点は、(1)本件訴えが訴権の濫用に当たるか、(2)本件記事が原告の社会的評価を低下させるか、(3)本件記事の公共性・公益目的の有無、(4)摘示事実の真実性又は真実相当性の有無、(5)損害額であった。被告らは、1億1000万円という高額請求が言論を萎縮させる目的であるとして訴権濫用を主張するとともに、本件記事の主眼は原告と京都府警等との不適切な関係の疑惑報道にあり公共性・公益目的があること、原告が元暴力団組員であるとの事実は真実であること等を主張した。 【判旨】 裁判所は、まず訴権濫用の主張を退け、本件訴えは適法であるとした。次に、本件記事について、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告が少なくとも平成22年ないし23年頃まで淡海一家に所属していた元暴力団組員であるとの事実を摘示して原告の社会的評価を低下させるものと認定した。京都府警の説明も記載されている旨の被告らの主張に対しては、記事が「京都府警はなぜ庇うのか」等の見出しの下に府警の説明を隠蔽と断定する内容であることから、採用しなかった。公共性・公益目的については、原告が公共工事の警備業務を受注する会社の経営者であること等から、これを認めた。しかし、真実性については、暴力団関係者らの証言は原告と対立関係にある者の供述であり客観的裏付けがないこと、破門状の存在のみでは組員であったとは認定できないこと、京都府警の照会で該当なしとされていたこと等から、原告が暴力団組員であったとの事実は真実とは認められないとした。真実相当性についても、被告個人が原告への直接取材すら行わず、対立関係にある暴力団関係者の一方的な供述のみに依拠したことなどから、相当な理由があったとは認められないとした。損害額については、慰謝料100万円、弁護士費用10万円の合計110万円を認容した。