商標権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 スイスで1893年に創業し、かばん製品等の製造・販売を世界的に展開するヴェンガー社(原告)が、中国のかばんメーカーの日本法人であるTRAVELPLUS INTERNATIONAL株式会社(被告)に対し、商標権侵害差止等を求めた事案である。原告は、やや丸みを帯びた略正方形の中央に白色の幅広の十字を配置した図柄の商標(国際登録第1002196号)を有していた。被告は、中国の親会社が製造した自社ブランド「SWISSWIN」のバックパック等のかばん製品を日本に輸入・販売しており、これらの製品には略正方形の中央に幅広の十字を配置した3種類の標章が付されていた。なお、被告グループはもともと原告ブランド「SWISS GEAR」のOEM製造を行っていた経緯があり、インターネット上のショッピングサイトでは、原告商品と被告商品の出所について実際に誤認混同が生じていた。原告は、被告各標章はいずれも原告商標に類似するとして、商標法36条1項・37条1号に基づく販売等の差止めと、同法36条2項に基づく被告商品の廃棄を請求した。 【争点】 原告商標と被告の3つの標章がそれぞれ類似するか否かが争点となった。原告は、外観・称呼・観念のいずれにおいても類似すると主張した。これに対し被告は、原告商標はユニークな丸みを帯びた形状であるのに対し被告各標章はスイス国旗に類似した形状であること、称呼も「マルカクジュウジ」と「カクジュウジ」で異なること、個人的な好みや嗜好が優先されるバッグの取引実情に鑑みれば需要者は両者を容易に区別できることなどを主張して、類似性を争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも認容した。まず商標の類否判断の基準について、同一又は類似の商品に使用された商標が商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、外観・観念・称呼等によって取引者・需要者に与える印象等を総合して取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきとした。その上で、原告商標と被告各標章はいずれも、四隅が直角でない略正方形とこれに囲まれた略相似形の略正方形、その内部中央に位置する幅広の十字から成るという全体的構成において共通しており、この共通点は取引者・需要者が着目する部分であるとした。他方、縁の丸みの有無、十字の幅の差異、色彩の違い(白色か銀色か)、陽刻・陰刻の有無といった差異点はいずれも微差にすぎず、全体的構成の共通点から受ける類似の印象を凌駕するものではないと判断した。また、スイス国旗との類似をいう被告の主張についても、スイス国旗は赤色の正方形に白色の十字という特徴的な配色であり、取引者・需要者はスイス国旗と原告商標・被告各標章のいずれとを対比しても全く異なると認識するとして排斥した。以上から、被告各標章を付した被告商品の販売等の差止め及び廃棄を命じた。