不正作出支払用カード電磁的記録供用,窃盗被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、主犯格であるRの統率の下、南アフリカ共和国の銀行が発行したデビットカードの電磁的記録を不正に作出して大量の偽造デビットカードを作成し、平成28年5月15日の早朝、福岡県・長崎県・佐賀県及び千葉県にまたがる広域で、多数の実行犯(出し子)を動員して、コンビニエンスストア等に設置された現金自動預払機から一斉に現金を引き出し、合計9590万円を窃取したという、不正作出支払用カード電磁的記録供用及び窃盗の事案である。犯行は、主犯格から仲介役・指示役を経て末端の出し子に至るまで組織的に計画・実行され、400枚以上の偽造カードが使用された。被告人は、主犯格Rの側近として、Rと各地の犯行を統括する仲介者Aとの間の連絡役を担い、偽造カードの管理・配布、犯行方法を記載したメモの作成指示、犯行延期や開始の連絡、窃取金の回収・運搬など、犯行の全過程に関与したとして起訴された。 【争点】 被告人の故意と共謀の有無が争点となった。弁護人は、被告人はRとAとの間の連絡やカードの受渡しに一部関与したことはあるが、本件犯行の内容を知らされておらず、故意及び共謀がないとして無罪を主張した。被告人も、Aとの連絡は単なる取次ぎにすぎず、カードの入った封筒を渡した際も中身を知らなかったと供述した。これに対し、共犯者A、N及びVがそれぞれ被告人の関与について供述しており、その信用性が検討された。 【判旨(量刑)】 裁判所は、共犯者Aの供述について、自己の重大な刑事責任を自認する内容であること、Nの供述と整合すること、通話履歴により裏付けられていることなどから高い信用性を認めた。Nの供述もAの供述と概ね整合し、被告人と面識がほとんどなく虚偽供述の動機がないとして信用性を肯定した。Vの供述についても、実際に体験しなければ知り得ない事実を含み、他の供述や客観的証拠と整合するとして信用性を認めた。一方、被告人の供述については、犯行の内容を知らない者が主犯格と仲介者の連絡を仲介するのは想定し難いこと、犯行前後に被告人とAの間で多数の発着信が集中していること、大量の偽造カードを犯罪と無関係の者に持たせるとは考え難いことなどから信用できないと判断した。以上を総合し、被告人は計画段階から犯行後に至るまで本件犯行に深く関わっており、故意及び共謀が認められるとして共同正犯の成立を認定した。量刑については、被害額が合計9590万円と多額で決済システムの安定を害した程度も大きいこと、被告人が主犯格の側近として犯行全般を通じて重要な役割を果たしたことを重視しつつ、主犯格との間に明確な上下関係があったこと、前科前歴がないことなどを考慮し、求刑懲役14年に対して懲役12年を言い渡した。