AI概要
【事案の概要】 岐阜市内で歯科医院を営む原告が、被告らに対し、名誉毀損を理由とする共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。原告は、顎関節治療と矯正治療を組み合わせた独自の治療法(ニューロマスキュラー矯正治療)を積極的に採用し、副院長である原告の妻が治療計画の説明等のカウンセリングを行っていた。被告Bは近隣で歯科医院を営む歯科医師であり、被告会社はインターネット広告事業を行う株式会社で、被告Dはその代表取締役である。被告Dは、被告Bの依頼を受け、平成26年1月から2月にかけて「2ちゃんねる」や「Yahoo!知恵袋」に、原告の歯科医院が顎関節症について虚偽の説明をして患者に高額な治療を受けさせている、治療費が常識外れに高額である、カルト宗教のようだ等の記事を複数回投稿した。原告は、これらの投稿により売上が大幅に減少したなどとして、営業上の損害、慰謝料等の合計約2億3800万円の損害のうち1億円の支払を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件各記載が原告の社会的評価を低下させたか、(2)事実の公共性及び目的の公益性の有無、(3)摘示事実の真実性・真実相当性及び意見ないし論評としての域の逸脱の有無、(4)損害額である。被告らは、各記載は医学的見解や歯科経営に対する反対意見の表明にすぎず社会的評価を低下させないと主張し、仮に低下させるとしても、公共性・公益目的があり、真実性または真実相当性が認められると主張した。 【判旨】 裁判所は、まず争点(1)について、本件記載1ないし4はいずれも原告の社会的評価を低下させると認定した。各記載は、原告の歯科医院が患者に虚偽の説明をして不必要かつ高額な治療を受けさせているという印象を与えるものであり、被告らが主張する「反対意見の表明」にとどまるものではないとした。ただし、記載5(無資格の女性によるカウンセリング)については、批判の根拠が示されておらず、社会的評価の低下は認められないとした。争点(2)については、歯科治療は患者の健康に関わる事項であるとして公共性を認め、被告Bについては専ら公益目的があったと認定した。一方、被告会社及び被告Dは取引継続目的で投稿に応じたにすぎず、公益目的は認められないとした。争点(3)については、被告Bが根拠とした患者からの相談内容や顎関節学会のガイドラインはいずれも各記載の真実性を裏付けるに足りず、真実相当性も認められないとした。特に記載3の「洗脳」「カルト宗教」との論評は人身攻撃に及ぶものであり、意見ないし論評の域を逸脱していると判断した。損害額については、約2億1500万円の営業損害の主張に対し、投稿の閲覧数が数百回程度にとどまっていたこと、消費税増税の影響の可能性等から、投稿と売上減少との因果関係を否定した。最終的に、慰謝料200万円と弁護士費用等40万円の合計240万円のみを認容し、請求額1億円の大部分を棄却した。