贈与税決定処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、平成21年2月28日、海上運送業を営む株式会社Eの株式20株を母から贈与された。Eはパナマ共和国に設立した外国子会社を通じて70隻の船舶を所有していたが、リーマン・ショック後の船舶価値の大幅下落を受け、原告は本件株式の価額を0円と考え、贈与税の申告をしなかった。これに対しα税務署長は、外国子会社の船舶70隻の価額を鑑定評価した結果、本件株式の価額は約43億円になるとして、贈与税約21億円及び無申告加算税約4億円の決定処分・賦課決定処分を行った。国税不服審判所の裁決で一部取消しがされた後も、贈与税約4億5000万円等の処分が維持されたため、原告がその取消しを求めて提訴した。本件では、便宜置籍船の仕組みを用いて外国子会社が所有する定期傭船契約付き船舶70隻の評価方法が中心的な問題となった。 【争点】 本件贈与日(平成21年2月28日)時点における船舶70隻の価額をどのように評価すべきか。具体的には、処分庁側の鑑定(取引事例比較法及び建造船価償却法による評価)と原告側の鑑定(DCF法による収益還元法に基づく評価)のいずれが合理的かが争われた。特に、定期傭船契約が付された船舶の評価において、当該契約による収益価値をどのように考慮すべきかが核心的な争点であった。 【判旨】 裁判所は、定期傭船契約付き船舶の客観的な交換価値を得るためには、当該契約において見込まれる収益価値を考慮して評価を行うことが相当であるとの基本的考え方を示した。その上で、処分庁鑑定については、取引事例比較法における定期傭船料の調整対象期間を3年に限定し、残存傭船期間の4年目以降の調整を全く行わなかった点が合理性を欠くと判断し、残存傭船期間が3年以下の10隻を除く23隻については処分庁鑑定価格を採用できないとした。また、建造船価償却法については、造船契約締結時から評価時までの市況変化について適切な補正がされておらず合理性を欠くとして、34隻全てについて処分庁鑑定価格を採用できないとした。一方、原告鑑定のDCF法による収益還元法については、残存傭船期間の設定、契約傭船料の設定、船舶管理費のインフレ率設定、割引率の設定及び契約終了時の船舶価値の算定のいずれについても合理性が認められるとした。以上の結果、船舶70隻の評価額は合計約1747億円となり、外国子会社の負債総額を下回ることから、本件株式の価額は0円となって贈与税額はないこととなるため、本件各処分は違法であるとして原告の請求を認容した。