AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和元年7月23日及び同年8月10日、高速道路上でいわゆるあおり運転を繰り返し、3名の被害者に対する強要罪及び1名に対する傷害罪に問われた事案である。 第1の犯行では、被告人は高速自動車国道を走行中、被害者Aの運転に怒りを募らせ、被害者車両の進路前方に割り込んで減速・蛇行するなどの行為を繰り返し、被害者車両を時速約1キロメートルまで減速させ、義務のないことを行わせた。第2の犯行では、同日、別の高速道路上で被害者Bの大型貨物自動車に対し同様のあおり運転を行い、時速約90キロメートルで走行していた被害者車両を時速約9キロメートルまで減速させた。第3の犯行では、同年8月10日、被害者Cに対し、幅寄せや進路前方への割り込み・停止を繰り返し、「今すぐ出てこい。殺してやる。」などと怒鳴り、高速道路上に被害者車両を停車させた。第4の犯行では、停車した被害者Cの顔面を右拳で5回殴打し、加療約1週間を要する顔面打撲傷等の傷害を負わせた。いずれの犯行も、被害者らの運転に妨害されたと感じた被告人が、やり返そうとした動機に基づくものであった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役2年6月、執行猶予4年(保護観察付き)に処した(求刑:懲役3年8月)。 量刑判断において、裁判所は、被告人が各被害者車両の極端な減速ないし停車をもくろんで高速道路上で執拗なあおり運転を立て続けに繰り返した点を重視し、追突等による重大事故を引き起こしかねない危険極まりない行為であったと指摘した。動機についても、やられたからやり返そうという自己中心的で身勝手なものと断じた。傷害罪については、高速道路上に停車した車両の運転席にいる被害者を殴打した行為の危険性を認めつつ、傷害の程度自体は軽い部類に属するとした。 他方で、被告人が被害者3名のうち2名に合計93万円の被害弁償を行い、残る1名にも100万円の被害弁償を申し出ていること、直近10年余の間前科がなく過去に実刑に処されたこともないこと、既に相当期間の身柄拘束により事実上処罰を受けた面があることを考慮した。そして、強要及び高速道路上での傷害等の事案の量刑傾向に照らし、社会的影響を加味して直ちに実刑に処することは公平な量刑を逸脱しかねないとして、執行猶予を付した。さらに、犯行の背景にある被告人の偏った性格傾向の是正と再犯抑止のため、保護観察に付すことが必要かつ相当と判断した。