AI概要
【事案の概要】 本件は、原告らが、元号の制定は憲法13条が保障する人格権を侵害するなどと主張し、3つの請求を行った行政事件である。第1に、行政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えとして元号制定の差止めを求めた。第2に、同法3条4項の無効等確認の訴えとして、元号を「令和」に改める政令(平成31年政令第143号)の無効確認を求めた。第3に、法務省民事局長が発出した戸籍事務の取扱いに関する通達(昭和54年6月9日付け法務省民二第3313号)の無効確認を求めた。 原告らは、元号の制定は国民が有する「連続している時間」を切断し人格権を侵害すると主張した。また、元号制の本質は「天皇による時間の支配」であり国民主権と基本的人権の尊重に反するとして元号法自体が違憲無効であると主張した。さらに、公文書における元号使用の義務付けにより、国民に元号の使用が事実上強制されているとも主張した。 【争点】 各訴えの適法性、具体的には、元号を定める政令の制定行為及び通達の発出行為に行政処分性(処分性)が認められるか否かが争点となった。 【判旨】 裁判所は、本件訴えをいずれも却下した。 まず、行政事件訴訟法上の「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうとの判例法理を確認した。 元号を定める政令について、裁判所は、本件政令は元号を令和に改めるというものにすぎず、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する規定はないと判断した。元号法も元号制定の手続を定めるにとどまり、国民に元号の使用を義務付けるものではないことは制定時にも再三確認されているとした。原告らの「元号と西暦の転換を余儀なくされる」との主張については独自の見解にすぎないと退け、原告らが引用した「公文書の年表記に関する規則」についても、国がそのような規則を定めた証拠はなく、地方公共団体の規則であったとしても国民に義務を課すことはできないとした。人格権侵害の主張については、元号は年の表示方法の一つにすぎず、新元号制定により法律上保護された利益の侵害があるとはいえないと判断した。 通達についても、上級行政機関が下級行政機関に対して発する行政組織内部の命令にすぎず、一般国民を直接拘束するものではないとして処分性を否定した。仮に通達に従った事務処理により国民の権利義務に影響があったとしても、それは個別の事務処理によるものであり、通達の発出自体によるものではないとした。 以上から、いずれの訴えも処分性を欠く行為を対象とするもので不適法であるとして、全て却下した。