AI概要
【事案の概要】 原告は、特定非営利活動法人ほっとポットの代表理事である社会福祉士であり、フェイスブックに実名で登録したアカウントを使用し、自らの活動に関する投稿(原告各投稿)を「公開」設定で行っていた。氏名不詳の投稿者(本件投稿者)は、「ほっとポット応援団」と題するブログ上に、原告各投稿の全部もしくは大部分を転載した7件の記事(本件各記事)を投稿した。本件各記事は、原告各投稿に独自のタイトルやコメントを付加し、一部の記述を削除したり、写真やイラストを追加したりしたものであった。原告は、本件投稿者の行為が著作権(複製権・公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権等)を侵害すると主張し、ブログのウェブサーバー管理者である被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)著作権(複製権・公衆送信権)侵害の成否、(2)著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権等)侵害の成否、(3)フェイスブックの「埋め込み投稿」機能の設定をもって原告が転載を承諾していたといえるか、(4)著作権法32条1項の適法な「引用」に該当するか、(5)発信者の故意・過失の要否(責任阻却事由)、(6)開示を受けるべき正当な理由の存否であった。被告は、原告がフェイスブック上で「公開」設定にしていたことから埋め込み投稿を含む転載について黙示の承諾があったと主張し、また本件各記事は適法な引用に該当すると反論した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容し、発信者情報の開示を命じた。まず著作権侵害について、本件各記事の転載部分は原告各投稿を有形的に再製したものであり、複製権及び公衆送信権の侵害が成立するとした。承諾の点については、フェイスブック上で「埋め込み投稿」を許容する設定にしていたとしても、原告各投稿の内容をいかなる形で利用することをも承諾していたとは解されず、埋め込み投稿の利用を超える転載については引用の法理により判断すべきとした。引用の成否については、本件各記事において転載部分とコメント部分の区別が不明瞭で一体として読まれること、転載部分の出所が明示されていないこと、転載部分が記事の主な部分を占めること等を考慮し、公正な慣行に合致した正当な範囲内での引用には当たらないと判断した。同一性保持権の侵害についても、独自のタイトル・コメントの付加、一部記述の削除、写真等の追加により原告各投稿が改変されたと認定した。責任阻却事由については、プロバイダ責任制限法4条1項には故意・過失の主観的要件が定められておらず、発信者が未特定の段階で原告にその不存在の立証を負わせることは相当でないとした。