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最高裁

国家賠償請求事件

判決データ

事件番号
平成30受2032
事件名
国家賠償請求事件
裁判所
最高裁判所第二小法廷
裁判年月日
2020年10月9日
裁判種別・結果
判決・破棄自判
裁判官
岡村和美菅野博之三浦守
原審裁判所
東京高等裁判所

AI概要

【事案の概要】 家庭裁判所調査官Aは、東京家庭裁判所において、当時17歳の少年(被上告人)に係る銃砲刀剣類所持等取締法違反の少年保護事件を担当し、調査を行った。同事件は不処分により終了した。被上告人はアスペルガー症候群の診断を受けていた。Aは大阪家庭裁判所に異動後、臨床精神医学に関する月刊誌がアスペルガー症候群の症例報告論文を公募した際に応募し、本件保護事件を題材とした論文を執筆した。Aは大阪家庭裁判所の指導に従い執筆届を提出し、首席家庭裁判所調査官らの決裁を受けた上で論文を公表した。論文中では少年の氏名や住所等は省略されていたが、家庭環境や生育歴に関する具体的な記載があり、これらを知る者が読めば被上告人と同定し得る可能性があった。被上告人は、裁判所職員が論文の公表を制止すべき義務を怠ったこと等によりプライバシーを侵害され名誉を毀損されたと主張し、国に対し国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた。 【争点】 1. 家庭裁判所調査官が少年保護事件を題材とした論文を専門誌に公表したことが、プライバシー侵害として不法行為法上違法といえるか。 2. 裁判所職員が執筆届の決裁に際し、論文の公表を制止すべき注意義務を負っていたか。 【判旨】 最高裁は、原判決中の上告人(国)敗訴部分を破棄し、被上告人の控訴を棄却した。プライバシー侵害の成否について、公表されない法的利益と公表する理由の比較衡量により判断すべきとした上で、以下の諸事情を検討した。公表されない法的利益に関しては、本件プライバシー情報が少年保護事件の調査により取得されたものであり、少年法が少年審判の非公開や推知報道の禁止を定めている趣旨に鑑み、その秘匿性は極めて高いとした。また、被上告人は公表当時19歳であり改善更生に配慮を受けるべき地位にあったとした。他方、公表する理由に関しては、アスペルガー症候群に対する正しい理解を広めるという論文特集の目的は重要な公益を図ることにあり、症例報告論文として家族歴・生育歴等の記載は必要なものであったとした。さらに、論文中に少年やその関係者を直接特定する記載はなく、事実関係の時期を特定する記載もなかったこと、精神医学関係者向けの専門誌に掲載されたことから、読者が被上告人と同定し具体的被害が生じる可能性は相当低かったとした。これらの諸事情を総合し、プライバシー情報を公表されない法的利益が公表する理由に優越するとまではいい難いとして、プライバシー侵害としての違法性を否定した。また、裁判所職員の注意義務についても、執筆届の決裁に際し論文の公表により被上告人の名誉又はプライバシーが侵害されるおそれがあると判断すべき状況にあったとはいえず、指導監督義務違反も否定した。裁判官全員一致の意見である。 【補足意見】 三浦守裁判官は補足意見において、少年保護事件に係る情報の取扱いについて付言した。家庭裁判所調査官が少年保護事件の調査内容をみだりに公表することは、私人としての論文発表であっても公務員としての法令上又は倫理上の義務に関わる問題が生じ得ることを指摘しつつ、少年非行の予防や再犯防止等のためには関係者間で適切な配慮の下に情報が共有され調査研究が深められることが必要であるとし、各組織において少年保護事件に係る情報の取扱いに関する適切な指導等の在り方を検討する必要があるとした。草野耕一裁判官は意見として、本件は少年法の趣旨に照らし一般のプライバシー侵害の判断枠組みだけでは適切に評価し得ない事案であり、本件プライバシー情報の利用は被上告人の改善更生という少年法の趣旨に抵触する態様であったとしつつも、結論として、本件公表により被上告人が同定された事実はなく、被上告人が公表の事実を知ったのは7年以上後のAの自発的告知によるものであって公表との間に相当因果関係がないとして、プライバシー侵害の結果が現実化したとはいえないと述べた。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。