商標権移転登録手続等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1ネ10062
- 事件名
- 商標権移転登録手続等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年10月14日
- 裁判官
- 大鷹一郎、本吉弘行、岡山忠広
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 イタリアの高級宝飾ブランド「ダミアーニ」グループの日本法人である控訴人(ダミアーニ・ジャパン)が、鹿児島市内で宝飾店を営む被控訴人(鈴屋)に対し、「ROCCA」に関する商標権9件の移転登録手続等を求めた事案の控訴審である。ダミアーニ・グループは1794年誕生の「ROCCA」ブランドを展開する国際的宝飾企業であるところ、2003年(平成15年)頃、ダミアーニ社の代表者Aが被控訴人代表者Cと面談し、被控訴人が鹿児島市に出店する店舗名を「ROCCA」とすることが決定された。その後、被控訴人は自ら「ROCCA」の商標登録出願を行い、2006年から2012年にかけて計9件の商標登録を取得した。控訴人は、2014年(平成26年)4月23日にA及びダミアーニ・グループのセールスマネージャーBが大阪市内のレストランで被控訴人代表者Cと面談した際、業務提携終了時に被控訴人が無償で商標権を控訴人に移転する旨の合意(本件合意)が口頭で成立したと主張し、主位的に商標権の移転登録手続を、予備的に商標登録の抹消登録手続を求めた。原審(東京地裁)は本件合意の成立を認めず、控訴人の請求をいずれも棄却した。 【争点】 控訴人と被控訴人との間で、業務提携終了時に被控訴人が無償で控訴人に商標権を移転する旨の本件合意が成立したか否か。控訴人は、宝飾メーカーのブランド名を販売代理店が権利化・保持できないことは商慣習上当然であり、口頭での合意も不自然ではないと主張した。被控訴人は、商標をめぐる契約を口頭で締結した事実はなく、控訴人の一方的な提案に取り合わなかったと反論した。 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却し、原判決を維持した。裁判所は、以下の理由から本件合意の成立を認めなかった。第一に、控訴人代表者Aの陳述書には、レストランの席上で商標返還を求めた際に被控訴人代表者Cが「最終的にこれを認めるに至った」と記載されているが、その具体的経緯の説明がなく、また当時被控訴人がダミアーニ・グループに支援を要請すべき事情があったことを認めるに足りる証拠もないとした。第二に、ダミアーニB.V.社が請求した商標登録無効審判を不成立とする審決が既に確定している状況下で、被控訴人が控訴人の提案に応じるべき合理的理由がないと指摘した。第三に、控訴人が2017年に被控訴人に送付した和解契約書案には「本件商標権の帰属について、長年にわたり、合意に至らなかった」との記載があり、これは2014年に本件合意が成立していたとする控訴人の主張と矛盾すると認定した。さらに、Aの陳述書中のCが合意に応じた理由に関する部分はA個人の内心の思いを述べたものにすぎず、本件合意の成立を裏付けるものではないとして、控訴人の主位的請求及び予備的請求をいずれも退けた。