損害賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30ネ2347
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年10月16日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 石井寛明、和久田斉、河野申二郎
- 原審裁判所
- 大阪地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 控訴人は、平成7年に自宅で発生した火災により子を亡くした。控訴人は、被控訴人(自動車メーカー)が設計・製造・販売した軽乗用自動車が通常備えるべき安全性を欠いていたため、同車から漏出したガソリンに風呂釜の種火が引火して火災が発生したと主張し、不法行為に基づく損害賠償として約5210万円(子の逸失利益・死亡慰謝料の2分の1、固有の慰謝料、弁護士費用)を請求した。控訴人は、本件火災に関して殺人罪等で有罪判決を受けて確定したが、その後再審で無罪判決が確定した経緯がある。有罪判決の確定により相続欠格事由(民法891条1号)が生じていたため、控訴人は再審無罪確定まで損害賠償請求権を行使することが法律上不可能であった。原審は除斥期間(旧民法724条後段の20年)の経過により請求権が消滅したとして請求を棄却し、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、旧民法724条後段の除斥期間の効果を制限すべきか否かである。控訴人は、(1)被控訴人の従業員らが刑事事件の捜査段階から再審即時抗告審に至るまで、車両からのガソリン漏出可能性を否定する誤った説明・証言・回答を繰り返したことが、控訴人の有罪判決や再審審理の長期化を招き、除斥期間内の権利行使を不可能にしたと主張した。また、(2)平成16年最判の趣旨に照らし、法律上権利行使が不可能であった場合には加害者側の関与を問わず除斥期間の効果を制限すべきであり、その判断は債権者ごとに相対的に行うべきであると主張した。さらに、(3)旧法後段の効果を制限しない解釈は、20年の期間を消滅時効に改めた民法改正の立法事実を否定するものであるとも主張した。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、平成10年最判及び平成21年最判が除斥期間の効果を制限したのは、加害者が被害者の権利行使を殊更に困難にした場合に限られるとの趣旨であると解し、加害者側の関与・寄与の有無・内容を含む総合的判断により、民法724条後段の適用が著しく正義・公平の理念に反するか否かを決すべきとした。その上で、被控訴人の従業員らの各行為について個別に検討し、ガソリン漏出を否定する回答に論理の飛躍がある可能性が高いことは認めつつも、控訴人の権利行使を妨害する意図・目的をもって行われたとは認められないと判断した。また、平成16年最判は除斥期間の起算点に関する法理であり、加害者側の事情に着目した平成10年・平成21年最判の法理とは異なるため、加害者の関与を問わず除斥期間の効果を制限する根拠にはならないとした。民法改正についても、改正法附則35条1項が施行日に既に除斥期間が経過した権利を適用対象から除外していることから、控訴人の主張を退けた。