選挙無効請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、平成30年の公職選挙法改正(本件改正)により導入された「特定枠制度」が憲法に違反し無効であるとして、令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙(本件選挙)の無効を求めた選挙無効訴訟の上告審である。 参議院比例代表選出議員の選挙は、昭和57年に拘束名簿式比例代表制が導入された後、候補者の顔が見えない選挙であるなどの批判を受け、平成12年に非拘束名簿式比例代表制に改められた。本件改正は、この非拘束名簿式を維持しつつ、政党等の判断により優先的に当選人となるべき候補者(特定枠の候補者)を定めることができる特定枠制度を導入したものである。具体的には、政党等が参議院名簿を届け出る際、候補者の一部について特定枠の候補者として当選順位を定めることができ、特定枠の候補者はそれ以外の候補者より上位の当選順位を有することとされた。上告人らは、特定枠制度では選挙人の意思と関係なく議員が選ばれるに等しく憲法43条1項に違反すると主張するとともに、同日施行の選挙区選出議員の選挙の定数配分規定が違憲であるから本件選挙も無効であると主張した。 【争点】 特定枠制度を定める本件改正後の公職選挙法の規定が憲法43条1項に違反するか。また、比例代表選出議員の選挙の無効訴訟において選挙区選出議員の選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることができるか。 【判旨】 最高裁第二小法廷は、裁判官全員一致の意見で上告を棄却した。本件改正後の選挙制度は、選挙人が名簿登載者又は政党等を選択して投票を行い、各政党等の得票数に基づき当選人数を決定した上、特定枠の順位及び各候補者の得票数の多寡に応じて当選人を決定するものであるから、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはないとし、憲法43条1項等に違反しないと判断した。また、比例代表選出議員の選挙の無効を求める訴訟において選挙区選出議員の選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることはできないとした。 【補足意見】 草野耕一裁判官は、結論に賛同しつつも意見を付した。拘束名簿式比例代表制は、候補者及び当選順位の決定が専ら政党に委ねられ有権者は政党を選ぶことしかできない制度であり、有権者が候補者個人を直接選択できる伝統的選挙制とは明らかな差異があると指摘した。国会が拘束名簿式を導入する際には選挙の仕組み自体の特性を十分考慮する必要があるとしつつも、政党が国民の政治意思を形成する有力な媒体であること、特定枠の候補者は名簿登載者の一部に限定されていること等から、本件改正が国会の立法裁量の範囲に属さないとはいえないとした。