各損害賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1ネ5279
- 事件名
- 各損害賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年10月23日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 岩井伸晃、宮島文邦、平城恭子
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所_立川支部
AI概要
【事案の概要】 控訴人らは、夫婦が婚姻の際に夫又は妻の氏を称すると定める民法750条及び夫婦が称する氏を婚姻届の必要的記載事項とする戸籍法74条1号(本件各規定)が、憲法14条1項(法の下の平等)、憲法24条(婚姻の自由・個人の尊厳と両性の本質的平等)及び日本が批准した国際条約に違反すると主張した。その上で、本件各規定を改廃する立法措置をとらない国会の立法不作為の違法を理由に、国家賠償法1条1項に基づき、被控訴人(国)に対し、それぞれ慰謝料50万円の支払を求めた。原審(東京地裁)が控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴した。控訴審では、平成27年最高裁大法廷判決(夫婦同氏制を合憲とした判決)以後の事情変更として、女性の社会進出の進展、選択的夫婦別氏制を支持する世論の増加、女子差別撤廃委員会による3度にわたる勧告、90を超える地方議会による意見書採択等を新たに主張した。 【争点】 (1) 本件各規定が憲法14条1項に違反するか。具体的には、夫婦別氏を希望するという「信条」を有する者に対し一律に氏の統一を求めることが、信条に基づく法的な差別的取扱いに当たるか。 (2) 本件各規定が憲法24条に違反するか。特に、平成27年最高裁判決以後の社会情勢の変化(女性就業率の上昇、世論調査における選択的夫婦別氏制支持の増加、通称使用の限界等)を踏まえ、本件各規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠くに至ったか。 (3) 自由権規約及び女子差別撤廃条約に違反するか。 (4) 立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるか。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、本件各規定は憲法14条1項及び24条に違反せず、立法不作為の違法も認められないと判断した。 憲法14条1項については、民法750条は婚姻の効力として夫婦同氏を定めたものであり、夫婦同氏を婚姻の要件としたものではなく、夫婦同氏又は夫婦別氏のいずれを希望するかにかかわらず一律に適用されるものであるから、信条に基づく法的な差別的取扱いには当たらないとした。 憲法24条については、平成27年最高裁判決以後も女性の社会進出が進み、改氏による不利益を受ける女性が増加傾向にあること、選択的夫婦別氏制を支持する世論が一定程度増加していることを認めつつも、住民票・運転免許証等への旧氏併記の拡大により改氏による不利益は一定程度緩和されていること、平成29年世論調査の時点では選択的夫婦別氏制を導入すべきとの意見が大勢を占めているとは認められないこと等を指摘し、選択的夫婦別氏制の導入については引き続き国会や国民全体における議論を尽くすことが求められている段階であるとして、本件各規定が国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っているとは認められないと判断した。なお、女子差別撤廃委員会の勧告についても法的拘束力を有しないとして、結論を左右しないとした。